研究課題/領域番号 |
19K20500
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
渡辺 謙太 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 主任研究官 (20725618)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 二酸化炭素吸収 / 気候変動 / 藻場 / 生態系機能 / 環境計測 |
研究実績の概要 |
本研究では,沿岸沈水植物による直接的な大気中CO2吸収について以下の3点を明らかにすることを目的としている.1) 普遍性:構成種や気候帯の異なる藻場群落において一般性を検証する.2) 規模:藻場の直接的CO2吸収による大気中CO2吸収フラックスを定量化する.3) 規定要因:生息深度や季節等の環境要因が直接的CO2吸収に与える影響を明らかにする.本研究では,フローティングチャンバー法及び放射性炭素同位体法により,この炭素フローの定量化を行う.
本年度実施した研究内容は以下のとおりである.(1) フローティングチャンバーの試作.(2) 亜寒帯及び温帯の海草藻場において,2つの手法による観測を実施.(3) 採取試料の放射性炭素同位体分析.(4) 海藻藻場の調査地検討・基礎データ取得.
本年度は,計画通りフローティングチャンバーを試作し,データの蓄積がある海草藻場で試験することができた.また,これまで知見の無い海藻藻場についても、海藻バイオマスやCO2分圧といった基礎データを取得し,候補地を決定することができた。この基礎データを取りまとめた英文査読付き論文を1編公表した.また,予想していたように放射性炭素同位体による手法は海域によっては適用が難しく,そういった海域ではチャンバー法が不可欠であることも分かった.一方で,試作チャンバーによる観測では,海草による顕著な直接的CO2吸収を実測することはできなかった.この理由として,チャンバーのサイズが小さく,海草の葉に干渉し,正確に計測できていない可能性が考えられた.そのため,この問題点を解決する新たな設計案を検討し,令和2年度に製作予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
チャンバーを試作し,いくつかの地点で現地調査を実施することができた.また,海藻藻場の調査地を決定し,基礎データを論文として取りまとめることもできた.一方で前述のとおり,チャンバーによる実測を通して,計測上の問題が生じたため再設計が必要になった.そのため,再製作・実測を次年度に繰り越している.
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今後の研究の推進方策 |
今年度判明したチャンバーの問題点を克服した新設計でチャンバーを製作する.具体的には,対象となる海草・海藻の葉長に合わせたチャンバーサイズの大型化及び素材変更による軽量化を予定している.改良したチャンバーを今年度決定した複数の海草・海藻藻場に適用し,直接的CO2吸収の普遍性,規模,規定要因を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
チャンバーによる実測を通して,計測上の問題が生じたため再設計が必要になった.そのため,再製作・実測を次年度に繰り越した.チャンバーの製作・現地観測を次年度に実施するため,物品費及び旅費として使用する計画である.
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