研究実績の概要 |
本研究の目的は小水力発電(出力1,000kW以下の水力発電)を事例に、コミュニティ・エネルギー(農山村コミュニティが主体となって再生可能エネルギー(以下「再エネ」)を導入して地域課題の解決へつなげていくしくみ)の実現に不可欠なコミュニティの主体性を検討することである。そのために、中国地方で1950,60年代に農協によって建設された小水力発電所(以下「農協小水力」)の調査を実施した。 最終年度は、農協の収支報告書の分析と関係者への聞き取り調査を実施した。その結果、(1)相応の売電単価が設定されれば、小水力は長期にわたり一定の収益を見込める事業となり得ること、(2)小水力発電事業の運営においては売電単価向上と人件費削減、激甚化する災害への対応が必要となることが明らかとなった。 補助事業期間全体では、農村における再エネを対象とした社会科学分野の先行研究のレビューを実施した結果、以下の2点を指摘することができた。(1)これまではコミュニティの主体性が重視されてきたが、近年は外部主体が関与しながらも地域に資する再エネの事例が報告されてきており、本研究の対象とする農協小水力もこれに位置付けられる。(2)再エネ導入においては地方自治体の役割が一層重要となってきており、自治体の取り得る支援策として土地利用計画と関連付けた再エネ導入計画づくりが有効となる可能性がある。 また、中国地方で小水力発電設備を新規に導入した事例の調査を実施した結果、導入の実態は把握できたが、地域に与える影響については長期的な視点での調査が必要であることがわかった。よって、今後は、土地利用計画と関連付けた再エネ導入計画の内実について検討するとともに、再エネ事業が地域に与える影響を長期的な視点から検討していきたい。
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