研究課題/領域番号 |
19K20511
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
江口 昌伍 福岡大学, 経済学部, 講師 (00823973)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中国 / 石炭火力発電 / データ包絡分析法 / 地域間格差 / エネルギー |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 (1)中国国内での、2009年から2011年にかけての1643か所の石炭火力発電所における、プラントレベルでの投入産出データを分析に利用可能な形で整理した。なお、ここでの投入産出データとは、プラントごとの石炭消費量、プラント稼働時間、所内率、電力生産量などを指す。 (2)上記で整理した投入産出データにメタフロンティアDEA(Data Envelopment Analysis)フレームワークを適用し、各プラントの発電効率性を推計した。また、分析においては、各プラントの発電における非効率性の要因を「発電所の規模による要因」、「発電所が立地する地域の違いによる要因」、「発電所のマネジメント面における要因」に分解した。分析結果から、大規模な発電所グループでは小規模発電所グループと比較して、約13%発電効率性が高いことが分かっただけでなく、大規模グループに属するプラントの中でも、東部・中部地方に立地しているプラントはマネジメント面での非効率性が発電の非効率性の主な要因になっている一方で、西部地域に立地するプラントは、東部・中部地方と比較して旧式の発電設備が多く残存しており、また、発電に用いられる石炭の質が低いことが発電の非効率性の主な要因になっていることが明らかになった。中国国内の火力発電所の発電効率性を分析した先行研究は過去にも存在するが、その非効率性の要因を、発電所の規模の違いや地域間格差などに定量的に分解して分析した研究はほとんど存在せず、本研究の学術的意義は大きいと考える。 本研究の成果は当該年度において、日本国内3つの学会において口頭発表にて報告し、現在はエネルギー分野のトップジャーナルのひとつである査読付き英文誌Renewable & Sustainable Energy Reviews誌において査読審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果は日本国内3つの学会において口頭発表され、また、研究成果をまとめた論文がエネルギー分野のトップジャーナルのひとつである査読付き英文誌Renewable & Sustainable Energy Reviews誌において査読審査中であるため。 これらの理由から、研究の進捗状況はおおむね順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究では、メタフロンティアDEAを用いて、中国の石炭火力発電における、プラントレベルでの質量(トン)ベースでの石炭及びCO2の削減ポテンシャルを推計する。これは、中国が地球温暖化緩和のための環境政策を執り行うにあたって、発電効率性の改善による石炭消費量及びCO2の削減ポテンシャルを定量的に把握することは非常に重要であると考えるからである。 また、推計された質量ベースでの石炭の削減ポテンシャルの要因分解分析を行い、発電所の規模や立地する地域の違いが、どの程度削減ポテンシャルに影響を与えているかを定量化する。 本研究成果は積極的に国内外の学会で報告予定であり、取りまとめた研究成果は査読付き英文誌への投稿を予定している。 ただし、学会報告の件数は新型コロナウイルスの感染拡大による制約を受ける可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
元々R2年度の支給額が他の年度と比較して少なかったため、R1年度の支給額からある程度繰り越す予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で3月の学会出張がすべてキャンセルとなったため、繰越額が当初の予定より大きくなった。 当初の予定では、今年度は国内学会3つ、国際学会2つでの研究発表を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で既に開催が取りやめになった学会もあり、残りの学会の開催状況も不透明なことから、旅費の支出に関しては見通しを立てるのが難しい。 従って、今年度は査読付き英文誌への掲載による研究成果の発表に一層力を入れるつもりであり、そのための英文校閲費用などに重点的に予算を執行する予定である。
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