科学知と在来知の結節を、エスキモーと非エスキモーの歴史を事例に、フィールドワークと先行研究との往還を通じて、記述的に更新したこと。グリーンランドでは、18世紀の植民地化以降、在来知に基づく慣習等への制約を最小化する施策が講じられた。結果、一方ではアラスカやカナダのエスキモー社会とは異なり、在来知と科学知の均衡性が保たれてきたことを指摘した。しかし他方では、民族誌等に記述される在来知的実践が、その後喪失の可能性が指摘できるにもかかわらず、直線的にその後の当地の人間の諸実践と紐づけられる民族誌的現在の問題も可視化した。両者の対照性は、先住民(社会)に対するイメージと実態への理解を促すものである。
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