本研究は、トルコの市民社会組織の活動や個人の言説分析を通じて、公正発展党政権期のトルコの政教関係、社会的分断の要因等を分析し、政治的観点のみならず市民社会の観点から現代トルコの政治・社会の変動を捉え考察することに資するという意義がある。また、主な調査対象としたギュレン運動は、実態が不明瞭ながら国内外で賛否両論があり、現代トルコ政治・社会研究において現政権との関係性という点でも看過し得ない重要性を有する。本研究は同運動の参加者のうち、国外に出た移民及び政治難民に聞き取り調査を実施し、トルコ本国の政治・社会状況が個々人の人生と信仰にいかに影響を及ぼしたかを解明する宗教社会学的な意義がある。
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