研究課題/領域番号 |
19K20523
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
小田 なら 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (70782655)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 伝統医療 / 南薬 / ベトナム南部 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ベトナム南部においてベトナム独自の伝統薬(「南薬」)による治療を積極的におこなってきた集団を対象に、南北分断・統一を経たなかでかれらがどのような薬材や人材やネットワークを用いながら医療活動をおこなってきたのかを明らかにすることであった。南ベトナム(1954~1975)で各種の医療が制度化される基盤となる経済的・社会的な構造については、これまでほとんど研究が見られない。この点を踏まえ、最終的に、本研究によって北ベトナムによる統一以降にベトナム南部の医療活動を支えた構造が変化した様相と、その変化がもたらした意味を考察することを目指していた。
しかし、最終年度の2021年度もCOVID-19の影響によって現地での調査実施は早くから難しいと見られていたため、本研究課題の前提となるこれまでの研究をまとめた成果報告に注力した。成果は主に二つに集約される。 一つ目の成果は、立命館アジア太平洋大学で開催された国際学会“The 19th Asia-Pacific Conference: Diversity and Inclusion”のパネル発表(オンライン参加)である。ここでは、本研究課題が扱う南部ベトナムにおける南ベトナム時代の伝統医療について報告し、日本の伝統医学、チベット医学、インドネシアの薬草治療の研究者とともに非西洋医療の社会・文化的文脈の相対化を目指した。 さらに、年度末には『<伝統医学>が創られるとき―ベトナム医療政策史』(京都大学学術出版会)を刊行した。本書は博士論文に基づいているものの、特に南ベトナムおよび統一後の南部ベトナムの医療に関し、政策と受容した社会の双方について補足を加え、本研究期間で得られた資料に基づいて大幅に改稿することで出版が叶った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究には現地調査を継続的におこなうことが必要であるが、COVID-19の影響によって現地滞在が困難な状況が続いているため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の現地調査の実施も不透明であるため、延長期間では渡航に備えた資料調査を日本国内と国内外のオンライン・アーカイブでできる限りおこなう。具体的には、仏領期から南ベトナム時代にわたって南部ベトナムの医療に関する政策資料と薬用資源の調査報告を収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大によるベトナム入国・滞在の困難な状況が続いているため、最も支出額の大きい現地渡航費・滞在費を使用できていない。次年度まで研究機関を延長することで、現地渡航が可能になるかどうか待機・検討し、滞在が現実的になった際には現地調査のために支出する計画である。
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