研究実績の概要 |
2023年度は、国内調査地を対象に大規模オンラインアンケートを実施し、世界自然遺産に認定されたマングローブ植生を含む本研究調査地に対する一般人の意識調査を行った。調査対象は性別、年代、地域(東京or調査対象地域)で同じ割合になるように割付を行った。世界遺産に対する認知、登録抹消に対する意見などに、個人属性による差異が見られた。アンケートにはフューチャー・デザインの視点を取り入れ、現世代視点と仮想将来世代視点での差異も明らかにした。結果詳細は近日中に論文として公開される予定である。 本研究全体としては、コロナ禍の影響で国外調査地のであるインドネシアバタム島での現地調査は断念せざるを得なかったが、統計資料、先行研究を用い、これまで収集したデータの再分析を行った。併せて、アフリカ、南米、インドネシア他地域で調査を行った研究者と共に各事例の比較・検討を行い、次の見解を得た。当該地でのマングローブ保全は、人の利用(この場合は製炭利用を目的とした違法伐採)ありきで保たれているものであり、人の利用が完全に途絶えた場合、商工業用地へと土地利用が改変されることが予想された。これらは熱帯林を生業とする地域においても同様であり、「人の利用が森の価値となる」を意味する「No Life, No Forest」という概念を提唱するに至った。国内調査地である西表島においては、マングローブの戦前・戦後の利用として、タンニンを利用した染料「カッチ」の製造履歴を明らかにした。マングローブ伐採が行われなくなった現在は、国外からの輸入がメインではあるが、マングローブカッチは複数の染料店にて現在も販売が行われている現状を整理した。
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