研究課題/領域番号 |
19K20531
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
三竝 康平 帝京大学, 経済学部, 講師 (50767473)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中国 / 経済制度 / 過剰投資 |
研究実績の概要 |
研究期間の初年度であるため、本年は研究資料の収集と整理、データベースの構築と基礎的な分析の実施および研究論文の執筆に取り組んだ。具体的には、本研究の目的は、中国の持続可能な経済発展にとっての「阻害要因」として、近年国内外で注目を集めている「過剰投資」のメカニズムおよびその実態について、その発生要因を「経済的要因」と「政治・制度的要因」に分解することによって、実証的に明らかにすることにあり、中国における中央・地方関係を立体的に描くことで、中国の持続可能な経済システムの在り方について、新たな知見を得ることにあるため、本年度は主に、中国国家統計局が出版している各種統計資料をもとに、試験的なデータベースの構築・整備作業に取り組んだ。 本研究の主要テーマである「過剰投資」は、経済的な要因だけでなく、政治・制度的な要因も大きく影響を与えているが、中国における制度的要因は、この数年で構築・形成されたものではなく、1949年の中華人民共和国建国以降だけでなく、それ以前の歴史的要因も大きな影響を与えながら構築されてきた。 そこで、中国における過剰投資の発生メカニズムを解明すべく、共同研究者である中兼和津次(東京大学名誉教授)と毛沢東時代(文革期)に焦点を当て、当該期間における様々な「過剰」の実態についての検討も併せて実施した。 それらの研究成果については、数度の研究集会等において中間報告を実施しただけでなく、報告者が取り組んだ翻訳・一部解説(蔡昉氏の著書China's Economic Growth Prospects: From Demographic Dividend to Reform Dividendの日本語版,2019年度に東京大学出版会より出版)においても反映させ対外発信することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、研究計画に従い、文献研究の実施や試験的なデータベースの構築を進めつつ、共同研究も実施し、複数回の研究集会等での研究報告や、翻訳・一部解説の刊行などによって研究成果を対外発信することもできたため、その点においては、研究はおおむね順調に進展しているといえる。 ただし、本年度末に発生した新型コロナウイルス感染症の世界的拡大に伴い、本研究対象地域である中国への渡航が制限され、現地調査を実施することが出来なかった。中国における過剰投資は、中国国内のみの現象ではなく、「一帯一路」をキーワードとして、中国の周辺地域である東南アジア地域なども巻き込んだ経済現象でもあるといえる。そこで、本年度末にはその東南アジアの中でもとりわけ、近年中国の経済進出著しいカンボジアを訪問し、過剰投資等に関する現地調査を実施した。それらにより得られた知見についても、本研究に反映させてゆきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度末に発生した、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大に伴い、現在、本研究の対象地域である中国への渡航が制限されている。本研究期間は残り2年間であるため、研究期間後半における中国への渡航可能性について検討する必要がある。具体的には、本研究は、データベースの構築およびその活用による定量的研究と、現地におけるフィールド調査に基づいた定性的研究を併用することで新たな知見を得ることを研究手法としているが、同感染症の今後の進展によっては後者の実施が難しくなる可能性があることは考慮に入れる必要がある。 しかし、これらの制約は、本研究目的の達成を大きく妨げるものではなく、当初予定していた研究計画や研究手法を若干変更し、調整することによって達成可能であると考えている。それらについては、2020年度以降の研究実施において検討を進めながら、研究目的の達成およびそれによる研究成果の対外発信を目指して今後も適切に研究を遂行したいと考えている。 なお、2020年度に山東省(中国)において開催予定であった国際学会での研究報告の申請をしていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大によって開催延期となったため、国内学会での研究報告を実施する予定である。なお、上記国際学会が開催された場合には、研究成果の報告を改めて実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の後半に研究会等での追加的な研究成果発表が考えられたため、そのための予算を確保するため前倒し申請を実施した。ただし、研究を遂行してゆくなかで、追加的な研究成果発表は実施しなかったため次年度使用額が発生した。ただし、研究自体については適切かつ順調に進んでいるため、次年度使用額が生じたとしても何ら研究遂行の支障にはならない。今後も引き続き、適切に研究を実施してゆきたいと考えている。
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