2023年度の主な成果として、論文「フィンランドにおける健康保険導入の政治過程―1950-60年代の政党政治に焦点を当ててー」北ヨーロッパ研究19巻、2023年、37~47頁(査読付き)の刊行、比較政治学会での「フィンランド福祉国家建設における農民政党の役割(」2023年6月17日、山梨大学)の報告が挙げられる。その他、東京保険医協会の医療制度研究会で「フィンランドの福祉国家論(総論)」(2023年11月28日、招待あり)の報告を行った。フィンランドに調査に行き、政治学者、ジャーナリスト、省庁、シンクタンク等を訪問した。進化学的分析を用いた福祉国家フィンランドの考察を行う研究にも進捗が見られ2024年度に出版を予定している(担当2章)。 研究期間全体を通じては、学会報告計6回、論文6本、論考2本、その他の発表・執筆を行った。福祉国家フィンランドの福祉政治史、特に農民政党との関係を明らかにする研究を進めることができ、特に年金制度、社会保険制度、国民年金機構(Kela)の歴史制度的分析を行い、学会報告、論文投稿を行った。また、農民政党および社会民主主義政党のルーツに関する研究も行い、前者については学会報告および論文投稿、後者については論考を発表した。特に福祉国家フィンランドの歴史的分析や政治学的分析に基づいた研究は日本ではこれまでほとんど行われておらず研究の蓄積が進んだ。スウェーデンとの比較からは、福祉国家フィンランドの成立経緯が大幅に異なることが明らかになり、権力動員論の問い直しなどにもつながる基礎的研究となっている。 コロナ禍を除き、フィンランドでのフィールドワークも継続的に行い、毎回議会図書館で資料を確認、収集した。また、新聞社、シンクタンク、研究者、省庁、政党等に訪問し、ネットワークを拡大するとともに研究に有用な議論の場を得た。フィンランド政治学会にも1度出席した。
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