研究課題/領域番号 |
19K20535
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
嶋田 晴行 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (50568110)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 移民・難民 / アフガニスタン / 平和構築 |
研究実績の概要 |
ドイツ、カナダの二カ国とアフガニスタンとの関係を具体的な対象とし、移民・難民への対応と平和構築などの国際援助の関係を明らかにする本調査の目的に従い、2019年度は日本国内における文献調査および現地での聞き取り調査を実施した。2019年度は主にカナダを調査対象とする計画であったことから、カナダ在住の博士課程院生(日本人)および自身もアフガニスタンから移住したカナダ在住のアフガニスタン人を研究調査アシスタントとして雇用し、カナダ東部と西部のアフガニスタン移民への聞き取り調査を実施した。15名を対象とした調査の結果、それぞれがアフガニスタンを逃れカナダまで辿り着いた理由、経路は様々であるが、その根本には2001年以降のアフガニスタンにおける戦闘、経済的困窮という背景があることが確認された。カナダを目指した理由については、一般に多く見られる親族や友人が既に移住していたことが多く挙げられたが、一旦は米国への入国許可を得たが、米国の入国制限が厳しくなったことでカナダに逃れたことなども挙げられた。全体的にカナダにおける生活には不満は無く、ヨーロッパなどで見られる迫害・差別なども調査時点で感じられていない様子であった。これまでの認識では、カナダは移民・難民に対して寛容な政策をとっており、そのことが限られた標本数ではあるが今回の調査でも裏付けられた。他方、アフガニスタン問題への国際的な関心が低下する中で、カナダ政府の対アフガニスタン支援も減少傾向にある。それに加えてカナダで次第に強化されている移民・難民受け入れ制限といった政策変化が、アフガニスタンからの移民・難民への対応にどのような影響を与えていくのかについては次年度の課題となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、2019年度内には日本における文献・資料調査に加えて、カナダにおける現地調査を実施する予定であった。文献調査に関しては、カナダの移民・難民政策、援助政策、対アフガニスタン外交政策に関する新たに文献を収集できた。後者については、研究実績にも記載したように、カナダ在住の大学院博士課程院生、アフガニスタン出身の移民などをアシスタントとして雇用し、基礎的な情報(年齢、学歴、職歴、家族構成、カナダへやって来た経緯・理由、カナダで住んでみての感想)を収集した上で、2020年2月から3月にかけて研究代表者がカナダへ渡航し、予備調査対象者の中から数名を選びより深い聞き取り調査を実施する予定であった。しかし、新型コロナウィルスの拡大に伴い、日本からカナダへの渡航は好ましくないと2月中旬時点に判断し(その時点でカナダにおける日本人の入国制限措置は取られていなかったがその後制限された)、2019年度内に予定していた補足調査は実施できなかった。それに代わって、現地アシスタントによる補足調査も検討したが、当初大きな影響がなかったカナダにおいても、3月中旬以降は新型コロナウィルスへの対応のため、外出自粛などの措置が取られたため断念せざるをえなかった。このような事情から、基礎的な情報の収集という目標は達成されたが、一定の時間をかけて信頼関係を築き、その上でさらに詳細な情報を得ていくという聞き取り調査は実施できないままになった。以上のような状況により、2019年度は、資料と基礎的な聞き取り調査によって得られた情報をもとに可能な範囲で分析を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度はドイツあるいはカナダにおける聞き取り調査を予定していた。しかし、新型コロナウィルスの影響がいつまで続くのかが予測不可能なため、現時点において海外における現地調査の実施が可能か、またそれがいつ頃か判断は難しい。そのためカナダおよびドイツで調査が不可能な場合は、2019年度と同じく、現地に滞在する大学院生などをアシスタントとして雇用し調査を実施することとする。その結果と文献資料による調査結果とを併せて可能な限りで当初の目的を達成することを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響拡大のため、3月に計画していたカナダにおける現地調査が実施不可能となったため。2020年年度後半に改めて現地調査を実施予定である。
|