本研究は当初予定では2020年度末で終了予定であったが、コロナ禍により2020年度の調査予定地であったカナダへの渡航が不可能となったため、2021年度中の現地調査の実施を念頭に研究期間を1年間延長した。しかし、コロナに関する状況は調査予定地においても依然として厳しいままであったため、2021年度は前年度までに実施した現地調査員によるインタビュー調査の結果の分析と関連文献のレビューによって調査全体のまとめを行った。つまり、当初計画していた研究代表者自身によるカナダ政府の対アフガニスタン支援とアフガニスタン移民・「難民」への対応に関しては、十分な調査が実施できなかった。そのような制約があったが、可能な範囲での調査によって、過去40年間に海外へ逃れた多くのアフガニスタン人のうち、比較的恵まれた環境にあると思われたカナダへ移住することができた人々も、慣れない環境下での家族のケアなどの日常生活での苦労、言語の壁に直面し、加えて調査対象者は比較的高学歴層かつアフガニスタンで専門的な職に就いていた人々であったが、そのキャリアに見合った職業を得ることは極めて難しいのが現実であることが明らかになった。反面、カナダにおける移民への対応を評価する声も多く、何よりアフガニスタンにおける反政府勢力による脅迫や治安への不安を抱えながらの暮らしに比べ、カナダではアフガニスタンでは得られなかった安心、安全に暮らせるという点に高い価値を見出していることも確認された。以上の成果をとりまとめた論文を執筆中であり2022年度中に発表予定である。
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