本研究は、研究代表者が所属する国立国際医療研究センターとニャチャン・パスツール研究所が、ベトナム・カインホア省の農村部コミュニティにおいて共同で実施している心血管疾患(CVD)に関するコホート研究の研究基盤を活用するものである。将来のCVDの発症を予測することが先行研究で示唆されているバイオマーカー(C反応性タンパク質(CRP))の関連要因を探求することを目的としている。急速な経済発展により、同地ではCVDやDMをはじめとした非感染性疾患による疾病負荷の増大が社会的な問題となっており、予防のためのエビデンスの構築が求められている。 2019年、2020年度に実施された、当該コホート研究のベースライン調査で、農村部に居住する40~60歳の男女3000名から血液サンプルを収集し、前年度までにCRP濃度を測定していた。また、同じようにベースライン調査で質問紙調査データも収集していた。最終年度はそうしたデータを活用して、様々な変数とCRP濃度との関連を統計的に検討し、学術論文としてまとめた。 また、コホート研究で収集した他のデータを活用し、「肉類摂取と糖尿病」「米摂取と糖尿病」「両親との離別体験とうつ症状」「ソーシャルキャピタルとうつ症状」「身体活動と高血圧」など、様々な研究トピックについての統計解析および論文執筆も行った。 コホート研究本体では、現在でも死亡やCVD、がんなどの重篤アウトカムに関する追跡を行っており、将来的にデータが揃った際には今回の研究課題で測定したCRPを予測因子として、そうした健康アウトカムとの関連を検討するような研究を展開することを予定している。
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