研究課題/領域番号 |
19K20537
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研究機関 | 農林水産省農林水産政策研究所 |
研究代表者 |
伊藤 紀子 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (80751809)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 食料分配 / ネットワーク分析 / 食事調査 / 農村調査 / ケニア / インドネシア / 比較研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アフリカとアジアの農業開発政策が農村社会に異なる影響を与えてきた過程を、食料分配や子どもの食事の獲得に注目しながら明らかにすることである。具体的には、ケニアとインドネシアの稲作農村地域において、社会ネットワークを通じた食料分配の機能を調査し、コミュニティの相互扶助システムを通じた子どもの食事の改善の実態を把握することを通じて、コメをはじめとする食料の安定確保や、地域の文化に沿った持続的農村振興策への示唆を得る。 2020年度には、すでに収集したデータを用いた分析の進展や、インターネットを通じた情報収集を行い、進捗状況に関する成果の多方面における公表を行った。まず、学会及び英語書籍によって、インドネシアとケニアで行った農村の食料消費や社会関係の再生産過程に関する比較研究の成果を公表した(「国際開発学会」での口頭報告、英語書籍 Hyden, G. et al, Rethinking African Agriculture: How Non-Agrarian Factors Shape Peasantに所収の論考の公表)。さらに、インドネシアの食料生産や消費に関する近年の政策の調査と紹介(農林水産政策研究所『カントリーレポート』の公表)、日本やアジアの農村における連携を生かした農村開発の実践に関する社会ネットワーク分析の公表(農林水産政策研究所・プロジェクト研究資料公表、研究成果報告会における口頭発表)、中国やアジアの農村における食料消費の変容に関する研究成果の発表(農林水産政策研究所『農林水産政策研究』所収の調査資料・近刊)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度においては、学会、書籍、報告会などを通じて、広く、インドネシアとケニアの調査結果に関する公表を行うことができた。しかしながら、計画していたインドネシアとケニアへの出張は、世界的な新型コロナウィルスの蔓延による渡航規制により実現できなかった。これまで収集したデータを用いた分析の進展や、インターネットを通じた情報収集は行えたものの、研究の核となる、個別の農家の食事や詳細なネットワークに関する聞き取り調査を行うことができなかったので、計画通りには進められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度以降、世界的な感染症の蔓延によって、海外出張は困難な状況が続いている。2021年度以降は、以前からケニアとインドネシアの農村調査において通訳や農村調査補助を継続して依頼している研究協力者のそれぞれに、調査の実施をインターネットを通じて依頼することで、研究を進展させる。日本やアジア地域との制度的な差異にも留意しながら、インドネシアやケニアの農村における、世帯間や組織間の社会ネットワークを通じた農村振興政策の実態や、儀礼時の食料授受を通じた子どもの食事への影響に関するデータをとりまとめ、査読付き雑誌論文、国際ワークショップ、農林水産政策研究所のHPなどにおける成果報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの世界的広がりによって海外渡航が難しくなり、予定していたケニア及びインドネシアへの出張が見送られたことなどにより、旅費などにおける支出が予定よりも少なくなった。次年度使用額に関しては、インターネットを通じた海外研究協力者による調査代行によって情報を収集する。さらに、渡航制限が緩和され、海外出張が行えるようになれば、インドネシアやケニアなどへの渡航費用として支出することを予定している。
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