研究課題/領域番号 |
19K20538
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
松嵜 英也 津田塾大学, 学芸学部, 講師 (20780133)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 半大統領制 / 未承認国家 / ユーラシア政治 / ウクライナ / モルドヴァ |
研究実績の概要 |
本年度では、ウクライナにおける未承認国家と半大統領制の制度設計について研究を進めた。特に、2014年のウクライナ紛争後の憲法体制の変更、すなわち半大統領制の「大統領・議院内閣型」から「首相・大統領型」への変更に着目し、国軍改革と自警団の台頭を分析しながら、紛争や地方の未承認国家化が政軍関係の構造に与えた影響を考察した。それにより、紛争の最中の憲法体制の変更によって、ウクライナ軍と内務省部隊の管轄の異なる状況が生まれ、国軍改革と自警団の台頭、その再編が進んだことで、政軍関係の構造が大統領の軍統制から大統領と議会による軍事組織の分割管理へと変化したことを明らかにした。この知見は、地方の未承認国家化が半大統領制の制度設計に与えた影響を示唆しており、本研究にとって大きな発見となった。なお、上記の成果は、「ウクライナにおける大統領の国軍統制の強化:2014年政変後の軍改革の事例研究」と題して、日本比較政治学会の分科会の「民主政治の存続と文民統制の比較政治学」にて還元し、査読を通して、来年度に論文が掲載される見込みである。事例研究が進んだ一方で、新型コロナウイルスの拡大によって、現地調査が困難となり、本研究に必要な資料を収集出来なかった。現時点でも、現地調査が可能な見込みは立っておらず、研究方法を修正する必要性に迫られた。そこで、今年度では、新たに計量テキスト分析の方法論の獲得に重点を入れ、プログラミングや基本的なテキストマイニングの手法を学んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の成果は、学会報告1件、書評が1件、学会誌に掲載予定の論文が1件であるが、ウクライナにおける未承認国家と半大統領制の設計の考察に大きな進捗が見られた。当初予定していた現地調査は新型コロナウイルスの関係で、かなわず、資料収集は大きく出遅れているものの、今後の研究に繋がるものとして、新たにテキストマイニングの手法を代替策として見出だしており、今年度はあまり費用のかからない内容を先に進めた。以上から、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初では、1990年代の半大統領制の起源を未承認国家の視点から探ることを研究課題としていたが、必要な資料は現地の図書館などにある。しかし、新型コロナウイルスの拡大によって、当面は現地調査による資料収集が困難である。そこで、1990年代ではなく、webによる情報収集が可能な2014年のウクライナ紛争を対象とし、半大統領制の設計との関係を考察する。より具体的には、テキストマイニングの手法をより深く学び、今年度において、十分に分析出来なかった東部の未承認国家とクリミアを分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの拡大によって、現地調査が不可能であり、その費用は全く発生しなかったため。また今年度では、費用のかかりにくい研究内容を遂行したが、次年度は書籍の購入など資金が必要となる。
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