研究課題/領域番号 |
19K20545
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
和田 理寛 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (70814325)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 上座部仏教 / 民族と宗教 / 誦経 / 宗派 / 東南アジア大陸部 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、東南アジア大陸部の上座部仏教と民族の関係について、言語・文字の実践に注目しながら明らかにすることである。2019年度の研究では主に、これまでの成果を発展し公表することと、タイでの現地調査に力点を置いた。 (1)研究成果の発展・公表 タイ国にはラーマン・タンマユットという特殊な宗派がある。これが少数民族モン(Mon)の僧から構成されており、多数派タイと誦経発声が異なることに注目しながら、20世紀にどのような展開を見せたのか研究を進めた。これは、これまで私が行ってきた研究の延長にあるが、2019年度は学会で発表して意見・批判を乞うとともに、8月にタイで補足調査(後述)を行い、最終的に論文(英語)にまとめ、研究誌『パーリ学仏教文化学』に投稿し掲載された。また、ミャンマー南部ダウェー地域の僧伽(出家者集団)について、タイ僧やビルマ僧との関係を部分的に物語る1910年代のタイ語資料が見つかったため、共著の研究ノートとして投稿の準備を進めた(2020年度中に投稿予定)。ダウェー僧伽については、独自の誦経発声や宗教実践があるのか、新たな課題として今後も注視したい。 (2)現地調査(タイ) 2019年8月、タイ国のバンコク都およびラーチャブリー県にて実質8日間の調査を行った。この調査では、まだ成果に直接つながるような結果は得られず、むしろ今後どのような課題をクリアしていくべきか自覚する良い(苦い)機会となった。この調査期間には、タンマユット派(タイの公認宗派)、ビルマ僧、ミャンマーのモン僧(少数民族)、タイ国(ラーチャブリー県)のモン僧、タイ国スリンのクメール系の僧、カンボジア僧などに話を聞き、また誦経の録音を行った。断片的に興味深い情報も得られたが、それぞれの僧によって得意とする誦経が異なり、同じ経を録音できないという問題に直面した。ここをどう解決するかは次回調査時の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は新任として新たな職場に転職し、新たな授業準備や学務に追われたことが、研究遅滞の主な理由である。現地調査についても、同様の理由により当初の計画ほど日数を確保できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、昨年度の遅れを取り戻すため現地調査に力を入れる予定であった。しかしながら新型コロナ・ウイルスの影響により海外渡航が難しい状況にあり、現在、様子を見ながら対策を練っているところである。差し当たり、来春(2021年2~3月)のタイとミャンマーでの調査予定を立てながら、仮に来春も海外調査が難しいという事態を想定して、代わりの次善の策としてインターネット上で誦経音声を入手し、その分析を行える体制を整えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由1)教務・学務に追われ、海外現地調査期間を予定より短縮することとなり、調査の一部を次年度以降に持ち越したため。 理由2)パソコンの購入を次年度に持ち越したため。
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