研究実績の概要 |
本研究は、「公益」の発揮を目的に造成された森林の特徴を江戸期に遡って把握した上で、その後「公益性」が明治期、帝国日本時期(植民地支配の時期)の「保安林制度」にいかに形成されたかを、日本・台湾を対象として明らかにする。特に、公益林を取り巻く行政・科学思想・所有構造・管理者の社会経済的動向が、森林管理に与えた影響を法制度と地域社会との関係を基軸にして考察するものである。 本年度は、コロナ禍で台湾渡航が制限される中、国内調査の対象地を高知県から四国4県に拡大し、主に明治初期に制度化された「禁伐林」の展開過程を明らかにした。禁伐林の設置状況は、徳島県49箇所121町歩,香川県529箇所902町歩,愛媛県箇所数不明2,182町歩,高知県303箇所446町歩であり、愛媛県が突出して多い。明治期の四国における禁伐林の特徴として、①明治11年合計3,651町歩の禁伐林が存在し、「魚付場」「廻船目標」「水防林」等の地域・時代特性を踏まえた保全内容になっていること、②木材だけではない住民の利用慣行が容認されていたこと、③公益の認識を「黒ミ」や影といった表現で人々が認識していたこと、を明らかにした。これら一連の研究成果については、2022年度に論文として取り纏め、投稿を予定している。
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