本研究は、2010年代以降のミャンマー、ネパール、スリランカ、ベトナムの若者たちの日本への移民を可能としている移民システムを検討することを企図した。 まず、これらの国々に共通して見られた若者のおかれた状況、すなわちミクロ構造の問題として、経済発展による高等教育の浸透や都市的なライフスタイルへの変化が生じる一方で、彼ら/彼女らの希望や教育水準に見合うホワイトカラーをはじめとした就職先が自国で供給できないということがあった。これに対する答えが移民であった。一方で、日本を選んだ理由については多くのケースにおいて特別な理由ではなく、経路依存的なものであった。これはメゾ構造の性格にも関連する。 いずれの国も日本への移民を経て帰国したパイオニア層がすでに存在しており、現在の若者同様に国内有力企業や多国籍企業へのアクセスがかなわず、送り出し機関や日本語学校など日本への若者の送り出しを支えるリソースとなっていた。日本関係に限らず、こうした移民を仲介するメゾ構造は量的な意味において極めて充実していたが、一方で移民の情報の体系化は遅れていた。よって、若者たちははじめにどの送り出し機関やその関係者、あるいは移民経験者にアクセスするかで移民先がほぼ決まっていた。また、こうした充実したメゾ構造により、手数料は高額なものの、移民のプロセスは整備されており、若者たちの移民に関わる負担は限定的なものであり、そのことがこの国々の急速な移民の増加につながっていた。このような運の要素は、様々なシーンに用意されており、日本での受け入れ先、手数料の多寡、自国での日本語教育レベルなどがそれに当たる。こうした現在の移民のあり方を「ガチャ移民」と名付けた。 以上のことから、日本への若者移民は、日本や世界の経済の変動に基づくマクロ構造だけでなく、各々の国や個人が持つミクロ・メゾの構造よっても強く突き動かされたものであった。
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