研究課題/領域番号 |
19K20554
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鶴園 裕基 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (10804180)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 出入国管理 / 移民 / 難民 / 国籍 / 戸籍 / 台湾 |
研究実績の概要 |
2020年度における本研究の研究成果として、以下の三つが挙げられる。第一は台湾の政治大学で開催されたワークショップ『自由、民主、人權與近代東亞:以臺灣為中心國際工作坊』(台北、2019年9月)において、「被封鎖的島:中央政府撤退前後台灣入境管制之形成(1949-1951)」を報告した。本報告では1949年から1951年の時期の台湾における出入国管理制度の変遷が、同時期の香港において発生していた難民問題と密接に関連するかたちで展開していたことを明らかにした。第二は本科研プロジェクトの一環としてミニシンポジウム『国籍、出入国管理、国際法:戦後東アジア移民問題への再アプローチ』(2019年11月)を開催し、「日華平和条約と日本華僑―五十二年体制下における『中国人』の国籍帰属問題―」と題した報告を行った。本報告では代表者の既存研究を基礎としつつ、中華民国政府の在外国民に対する法的処遇の問題を中心に議論を展開した。また本研究課題に関連するテーマを専門とする研究者である、加藤雄大(東北大学)、高希麗(神戸大学)の両名にも参加・報告いただき、意見交換を行った。第三は、若林正丈、家永真幸『台湾研究入門』所収、「国籍と戸籍から見る中華民国台湾の境界」を発表した。この論文では、出入国管理に際して、その基準となる台湾の人的な境界がいかに形成されているかを、国籍と戸籍という二つの制度に焦点をあわせて検討した。このなかでは、台湾住民と非台湾住民を分かつ境界が、植民地期から現代にかけて、一貫して戸籍の有無によって根拠付けられていたことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度においては、当年度の目的としていた台湾の入管法制の全般的な解明までには至らなかったものの、派生的なテーマを深掘りし、かつ一定の業績を挙げることが出来た。また台湾において史料調査を行い、2020年度以降の研究計画に必要な資料を収集し得たため、おおむね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究の方向性としては、(1)出入国管理法制の側面では、60年代以降の法制度の変遷の整理を行う、(2)香港難民問題、ビルマ・北タイ難民問題に関する既収集分の資料の分析、ならびに日本国内から実施できる史料調査を行う、の二点に大別される。本年度は夏期・春期休暇の期間に台湾での滞在調査を行う予定であったが、COVID19の影響によりいつ台湾に入国できるかが不透明なため、本来の計画通りの実施には困難が予想される。そのため、日本国内において実施可能な研究・調査を進めていく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月にハワイで予定していた国際学会(ISA)がキャンセルとなり、旅費のリファンドが生じた。必要書籍等の購入費に充当したものの、結果として差額が生じることとなった。2020年度において本差額は、出張旅費の一部として使用する予定である。
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