研究課題/領域番号 |
19K20555
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研究機関 | 新潟国際情報大学 |
研究代表者 |
佐藤 若菜 新潟国際情報大学, 国際学部, 准教授 (90788928)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 民族衣装 / 刺繍 / 製作 / 技法 / 女性 / ミャオ族 / 少数民族 / 中国 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中国貴州省のミャオ族女性による衣装製作が、ミャオ族社会においてどのような意味合いを有してきたのか、その内実と変化を捉えることにある。特に1970年代以降、刺繍技法がミャオ族女性全体に普及するなかで、「衣装を製作すること」ないし「製作技法を習得していること」は、ミャオ族の社会や女性によっていかに位置づけられてきたのかを明らかにする。 この目的を達成するために、令和元年度は、4月から7月にかけて関連する文献と資料を読み、調査・研究計画をより詳細に組み立てた。これにもとづき、8月から9月にかけては現地調査を行う予定だったが、他の予算での調査が必要になったため、本調査を3月に移動した。だが、新型コロナウィルス感染症により中国への渡航が難しくなったため、これまでの調査から得たデータを再整理し、単著やシンポジウム・学会での口頭発表を通して公表することにした。これによって、先行研究におけるミャオ族の事例の特徴が明確になり、研究全体としては大きく進展したと言える。 これまでの民族衣装に関する研究においては、刺繍のできばえは女性の根気強さや勤勉さを示すと指摘されてきた。だが、データを再整理すると、ミャオ族においては女性としての「賢さ」を示すという語りが多く、この「賢さ」とは刺繍技術ののみこみの速さや、デザインを多く創出できる機敏さを指していることがわかった。また、ミャオ語でデザインの創造について語る際には、「心」(ミャオ語で「カニャン」)がキーワードとなっており、ミャオ族の女性たちは「心」からアイディアを取り出すことが重要と捉えていた。 一方で、こういった刺繍製作に対する考え方が、30歳代以下のミャオ族女性たちにどれほど普及しているのかという点についてはデータがやや少ないということ、また女性の就学年数・出稼ぎでの就労年数等を踏まえた調査が必要であることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染症の蔓延により、中国での調査は中断せざるを得なかったが、単著の出版にあたっての査読やシンポジウム・学会での口頭発表を通して、先行研究を整理し、多くの研究者の方々からこれまで集めたデータの分析に対するアドバイスを得た。これによって、議論を進展させ、調査・研究計画をさらに洗練させることができたという点では、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は令和元年度に実施予定だった調査計画を遂行し、学会での口頭発表や学術論文を通して公表する。元々の計画にもとづき、中国貴州省のミャオ族女性(約50名)を対象に、年齢・出身地・母親の出身地・就学年数・出稼ぎでの就労年数・経済的状況などに加え、習得している刺繍技法とその習得時期や習得過程を、聞き取り調査によって詳細に把握する予定だが、新型コロナウィルス感染症が終息しない場合には、メールや電話、SNSによる聞き取り調査も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の蔓延により、中国での調査が困難になったため、それにあてる予定だった旅費と人件費・謝金を使用することができなかった。元々、次年度の直接経費には現地調査にあてる旅費と人件費・謝金を計上していなかったため、令和元年度に実施する予定だった現地調査を次年度に実施する。また、次年度の研究経費として計上していた国内外での学会発表のための旅費・学会参加費についても、すでに学会発表を申請していることから、予定通り使用する。
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備考 |
佐藤若菜「中国貴州少数民族の服飾文化:ミャオ族の事例から」共立女子大学・短期大学総合文化研究所「中国貴州少数民族の服飾文化と歌文化」(講演・展示パネル作成) 2019年11月9日 佐藤若菜「日本におけるミャオ族研究」(中国語) 中央民族大学民族学与社会学学院「中日人類学学術交流シンポジウム」(北京) 2019年9月13日
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