研究課題/領域番号 |
19K20555
|
研究機関 | 新潟国際情報大学 |
研究代表者 |
佐藤 若菜 新潟国際情報大学, 国際学部, 准教授 (90788928)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 民族衣装 / 刺繍 / 製作 / 技法 / 女性 / ミャオ族 / 少数民族 / 中国 |
研究実績の概要 |
2021年度は、対象地域を広げて先行研究を参照し、昨年度までに公表した研究成果との比較を行った。参照した文献の一つFashionable Traditions:Asian Handmade Textiles in Motion(Lexington Books,2020年)に関しては書評を執筆し、学会誌『文化人類学』に寄稿した。そのなかで、本研究が重点的に研究を進めてきた手仕事について理解を深めるには、機械化という相反する動向にも着目する必要があると考えた。手仕事だけでなく、機械化した製作工程も視野に入れることで、ミャオ族女性にとって「衣装を製作すること」や「製作技法を習得していること」にはどのような意味合いがあるのかをより多面的に検討することができるのではないかという着想に至った。この着想から、7月には「機械刺繍は衣装製作に何をもたらしたのか:中国貴州省ミャオ族の事例から」というタイトルで、国立民族学博物館共同研究会「伝統染織品の生産と消費:文化遺産化・観光化によるローカルな意味の変容をめぐって」で発表した。このほかにも、ミャオ族の民族衣装が商品化してもなお、衣装を自家用に作り、所有するということが、調査地のミャオ族によって重視され続けている点を、英語論文”Commodified Ethnic Costumes: Case Studies on Miao Women in Guizhou Province, China”にまとめ、英語の学術書Created and Contested: Norms, Traditions, and Values in Contemporary Asian Fashion(ILCAA,2022年)に寄稿した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年7月26日から2022年3月31日まで産前産後の休暇・育児休業の取得に伴い研究を中断したため、当初の予定よりは遅れてしまった。だが、研究を中断する前の約4ヶ月のうちに、英語論文や書評を執筆し、研究会での発表も行ったことにより、機械化という新たな視点を加えて研究を進めることができた。以上のことから「やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
産前産後の休暇・育児休業の取得に伴い補助事業期間を1年間延長した。今後は2019度と2021年度に実施予定だった調査を、2022年度に実施する。元々の計画にもとづき、中国貴州省のミャオ族女性(約50名)を対象に、年齢・出身地・母親の出身地・就学年数・出稼ぎでの就労年数・経済状況などに加え、習得している刺繍技法とその習得時期や習得過程を、聞き取り調査によって詳細に把握する。また、姉妹間や母子間、親戚間、隣人間ないし異民族間での衣装製作委託の実態についても調査を行う予定である。しかし、新型コロナウィルス感染症が終息しない場合には、これまで集めたデータや収集した文献をもとに、研究成果の公表に注力する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年7月26日から2022年3月31日まで産前産後の休暇・育児休業の取得に伴い研究を中断したため、研究費を十分に使用することができなかった。また、新型コロナウィルス感染症の蔓延により、中国での調査が困難になったため、それにあてる予定だった旅費と人件費・謝金を使用することができなかった。新型コロナウィルス感染症が終息した場合には、2019度と2021年度に実施予定だった調査を、2022年度に実施する。終息しない場合には、英文校閲費や報告書出版費等にあてて、これまで集めたデータや文献をもとに研究成果を公表する予定である。
|
備考 |
書評:Ayami Nakatani編著Fashionable Traditions:Asian Handmade Textiles in Motion(Lexington Books,2020年)『文化人類学』86巻1号 第37回大平正芳記念賞(公益財団法人大平正芳記念財団)受賞 第18回木村重信民族藝術学会賞(民族藝術学会)受賞
|