研究課題
カメルーン南部およびインドネシアのジャワ中部にてカカオ生産地の変容について調査をおこなった。カメルーンではカカオの収入が子どもたちの学費に充てられてきたが、その子どもたちの多くは町で仕事をしており、村に残った女性や近隣の狩猟採集民がカカオ生産を担っている。子どもたちによる送金は畑の拡大や労働力確保に使われるだけでなく、村の商店の設置に寄与している。これまでカカオ収穫期のときに商品が村に流れて、売買がなされてきたが、近年は商店が複数できたことで恒常的に商品にアクセスできるようになっている。一部は商売活動に力を入れるようになり脱農業化の動きがみられる。インドネシアでは、若者が都市に流出し、村内で労働力不足が問題となっており、この点はカメルーンでも同じであるが、インドネシアの都市住民を対象にした観光に力を入れながら、生き残りをはかっている。たとえば農村で栽培されたカカオを用いたチョコレートの販売、カカオと米粉を混ぜたお菓子やバナナチップの加工体験ができる。しかし、近年の気候変動の影響で、収穫期がなくなりつつあり(少量を通年収穫)、カカオではなく、アブラヤシなど他の作物に移行する動きもみられる。生産地域の変容の理由として気候変動もあげられるようになっていることが明らかとなった。また、フランスの国立海外文書館でカメルーンにおける交通にかんする資料を収集した。植民地時代における交通網の整備は換金作物の拡大にとって欠かせないものであり、中身を詳細に分析していく。成果報告として、アフリカ学会の「アフリカの農と農村再考」フォーラムにて、カカオ生産地域における多生業について報告をおこない、アフリカ研究で原稿化した。カカオ生産から別の作物に力点を変える過程においても、人々の多生業を重要なう役割を果たす。今後、多生業を議論を広げて書籍化を目指す。
3: やや遅れている
アフリカ、アジアそれぞれのカカオ生産地域で調査を行い、相違を見出すことができたが、前年の遅れの影響から、収集した資料を整理に時間がかかっている。
文献、論文校閲などを通して予算を執行する。また、収集した資料を整理し、両地域の比較をしながら論文執筆をおこなう。
他の研究プロジェクトの予算を執行する必要があったことと本年度の収集した資料の整理に時間がかかっており、論文執筆の時間が遅れているため。使用計画としては、次年度の論文執筆のための文献収集、校閲費にあてる予定である。
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