2022年度において、前年度にはコロナウイルスパンデミックのため困難であった現地調査を実施し、プロジェクトの完成に必要なデータを収集した。本年度の現地調査は主に北アルプス地域で行った。新型コロナウイルスパンデミック以降の山岳地域の観光・登山形態の変化について調べながら、山小屋や登山道で聞き取りから情報収集を行い、研究期間全体を通して収集したデータを整理・分析した。本研究では全体の期間中に北アルプスのほぼ全域で取材を行い、主な登山ルート、山小屋やビジターセンターなどで聞き取り調査、参与観察(主に写真撮影や録画作成)およびアンケート調査を実施した。2022年度に収集したデータの分析に基づいた論文は現在執筆中であり、今後学術ジャーナルに投稿する予定である。プロジェクト期間中にまとめた4件の国際査読付論文は、すでに学術ジャーナルに掲載されている。掲載された論文では上高地や白馬岳地域の事例を取り上げ国内の山岳地域でのアルパインツーリズムの課題を分析したほか、日本に限らず山岳地域の現在の課題、とりわけ山岳地域の自然環境の脆弱性やレジリアンスとツーリズムの接点について分析を行った。学術論文のほか、日本地理学会や日本地球惑星連合大会など国内や国際学会で研究成果を発表してきた。特に日本地理学会では自分の研究成果だけでなく、他大学で行われている研究や北アルプスの現場で行われている実践的取組について紹介しながら幅広く議論を進めた。また学術的結論に加え、世界各地の山岳地域を一種の自然遺産として見做した上で、その自然多様性やレクリエーション機能の総合的保全の取り組みが必要である、といった重要なソーシャル・アウトリーチ的な指摘も提供した。
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