研究課題/領域番号 |
19K20571
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
日原 勝也 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (70526673)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | リスク・シェアリング / 契約理論 / ゲーム理論 / シェアリングエコノミー / 観光地域振興 |
研究実績の概要 |
観光振興の主体、空港及び航空会社の関係は、対立と協調が共存する複雑で多面的な構造を有する。本研究は、不確実性と情報の非対称性の下、そうした多業種間・多数者間の最適なリスク・シェアリング・メカニズムの解明を目的とする。代表者は、不完備契約理論、ナッシュ交渉解等の枠組みにより、空港・航空会社間の最適な線形のリスク・シェアリング契約を解明する成果を得た。次に、観光振興の主体を加えた関係に拡張し、リスク・シェアリング・メカニズム分析の深化を試行中。また、プラットフォーマーが利用者と供給企業をつなぐビジネスモデルが、宿泊、輸送等の分野でシェアリング・エコノミーとして拡大しており、多業種間・多主体間の最適なリスク・シェアリング・メカニズムの分析結果の活用も期待される。 COVID-19の世界的な蔓延により、観光関連業界には空前の悪影響がもたらされている(パンデミック前に比べ、2020年の世界の国際訪問客73%減(UNWTO)、2021年の訪日客は99%減(JNTO))。従前から、我が国のインバウンド需要は他国に比べ変動幅が大きく(その価格弾力性は米国などに比べ高い(1.69, Vanhove(2005))、地震やマクロ経済ショックの影響も大きいこともあり、需要リスクのコントロールの重要性が、現在、改めて注目されている。 2021年度は、COVID-19ショックからの回復で大きな課題となる気候変動リスクへの対応(グリーンリカバリー)について、各国間のリスク・シェアリング・メカニズムに関する分析を書籍(共著)として出版。平均気温からの偏差に基づく確率過程を想定し、途上国と先進国のリスク・シェアリングをモデル化し、最適解が得られる条件等について分析結果を導出。また、デジタルプラットフォーマーの仲介によるシェアリング・エコノミーに関する分析も進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度に引き続き、2021年度も予定されていた国際学会がすべてオンラインのみ、ハイブリッド、又は規模を大幅に縮小しての催となり、最先端の知見を有する海外の研究者との意見交流のレベルが大幅に低下していることから、当初の予定より遅れている状況となっている。このため、研究期間を2022年度末にまで延長し、当初意図した研究目標を達成すべく研究を継続している。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症の流行が3年目に入り、ワクチン接種の進展、経口薬品等の承認によりウイルスとの共存の方向がうかがえる状況になりつつあり、海外の国際学会も対面で開催されるものが散見されるようになっている。他方、関係国との間で出入国に際しての隔離措置等の水際対策は引き続き一定の内容が存在しており、こうした対策が緩和され出入国時の負担が大幅に低限するまでの間は、海外研究者との交流は制約を受けざるを得ない。その中で、規制緩和状況をとらえつつ、また、オンラインの環境を最大限利用しつつ国際的な研究交流を試行し、併せて、基礎的・理論的な知見の蓄積、数値解析の基礎的技術の向上等の基盤的な知見の蓄積にも努め、本来の研究計画について、可能な範囲で進捗を図る予定としている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に予定されていた国際学会の多くが中止、または、規模を大幅に縮小してのオンライン開催(一部はハイブリッド方式)となり、最先端の知見を有する海外の研究者との意見交流が大幅に低下していることから、使用額、次年度使用額に示した状況が生じている。 今後は、新型コロナ感染症の流行が、ワクチン接種の進展等により収束に向かうことが期待され、徐々に海外研究者との交流も再開しつつ、本来の研究計画について、可能な範囲で進捗を図る予定としている。
|