世界規模での観光発展による交流人口の増加によって、様々な観光地で訪問者のインパクトに対応するための持続可能な観光のための地域マネジメントが求められている。なかでも正負のインパクトの空間的波及効果の指針となる回遊行動の実践的な調査の方法論構築の必要性が高い。コロナ禍により、観光の勢いは一時的に低迷しているものの、今後の市場復活によって、オーバーツーリズムなどコロナ禍以前に発生した問題が再発する可能性は十分に考えられる。また、今後の観光地の復興において、人流データにより回遊性や誘致圏を観測することは、ポストコロナにおける新たな観光計画立案のための現状分析に利用可能な基礎資料として重要となるであろう。 本研究は、観光地における訪問者と環境に関わる諸要素の相互作用を考慮した観光回遊行動の調査・分析フレームワークの構築と実践を主要な目的としている。2021年度は、大規模な人流データによって観光地を訪れた観光客の観光動態を分析するためのフレームワークを構築し、有名観光地である箱根町を事例に、実際の人流データからその有用性を検討した。人流データとしてスマートフォンから収集された大規模なGPSログデータを活用したことで、滞在者数、域内のゾーン間流動や回遊行動、誘致圏といった複数の指標を詳細に把握できた。また、それらの分析結果をWeb上のデジタル地図上に視覚化することによる、観光地のマネジメント組織内での情報共有の方法を提案した。
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