研究課題/領域番号 |
19K20573
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
河内 良彰 佛教大学, 社会学部, 講師 (70804889)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 観光回遊行動 / 観光地の中心性分析 / 社会ネットワーク分析 / 有向グラフ / 観光モデルコース / 観光ガイドブック / アシェット・リーブル |
研究実績の概要 |
2021年度は、観光ガイドブックに記載されているモデルコースを定量的に把握し、コロナ下のインバウンドツーリズムに寄与する研究を行った。フランスのHachette Livreが発刊する“Guide evasion Japon”を分析対象とし、「観光地の中心性分析」を用いて「別の観光地への1回の移動」を有向グラフで「出次数1」と定式化した。各観光地・観光施設等に重みづけを行い、京都市の[中心市街地]に位置する観光地や商業施設周辺の凝集性の高さを解明した。 観光学分野で有向グラフを活用した既存研究はいくつか存在するが、旅行客移動の有向性を考慮して全体構造を明らかにした研究はいまだ少なく、本研究では経営学の知見を引用した。社会科学領域の諸分野で知識・情報などの経営資源のやり取りを分析する目的で用いられてきた「有向グラフ」の有用性を確認した。従来、組織間の知識移転などの一方向性を伴う現象や組織の資源獲得における評判、影響力など、関係の方向性が意味を持つ要因の分析のほか、個人間のネットワークに関しても社内コミュニケーションのような個人間のインフォーマルなつながりの分析、問題解決や支援に関する同僚からの評価の可視化などで用いられてきた経緯を挙げた。 分析に際し、構造上はパスおよびリンクと見なされる路地の扱いを検討し、名所の周辺エリアの観光地を集計し、起点となる駅も同様に分析対象とした。結果、[中心市街地]に位置する観光地や商業施設周辺の凝集性の高さや、観光地クラスターが緩やかに結合せずに完全に分断されたモデルコースが形容されていることを明らかにした。本研究の末尾において、型通りのコース編成や格付けの踏襲についての問題提起も行った。 なお、本研究の骨子は、2021年12月に立教大学で開催された第36回日本観光研究学会全国大会(オンライン開催)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、本研究課題に関する研究を予定通り遂行できなかった。コロナ禍の流行状況により、2020年度のような緊急事態宣言こそ発令されていないが、それに替わるまん延防止等重点措置が長く実施され、様々な自粛や行動制限に伴う観光地の停止状態が続いた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はコロナ禍の第4波~第6波に見舞われた。2021年11月に南アフリカで報告されたオミクロン株は、2022年1月以降のわが国で新規感染者数を急速に増やした。本研究を遂行するうえで、旅行者への対面調査が不可欠であるが、2022年5月現在、新規感染者数の高止まり傾向があり、いまだ見通しは立っていない。今後の調査計画と実施時期については、具体的な中身を慎重に検討する必要がある。2021年度同様、観光ガイドブックが推奨する観光コースの定量的な把握や、旅行予定者へのアンケート調査に基づく回遊行動の分析などを進める方策である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の世界的蔓延に伴い、インバウンドを含む旅行者への対面調査を取り止めた。調査や出張等の予定が相次いでキャンセルを余儀なくされたことにより、当該研究は2022年度まで延長し、使用額の変更が生じた。未実施の旅行者への調査について、感染状況を注視しつつ安全面に配慮し、旅行者が観光地に戻ってきた段階での実施を予定する。
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