研究課題/領域番号 |
19K20574
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
和泉 大樹 阪南大学, 国際観光学部, 准教授 (50711892)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミュージアム / 観光 / 類型化 |
研究実績の概要 |
今年度は、①各地のミュージアムが展開する観光に関する事業の実践事例の類型化の方向性を中心に研究し、その成果を学会発表した。また、②新潟市新津鉄道資料館、③茅野市美術館について調査を実施し、分析した結果を論文として発表した。今年度の助成金は、主に上記研究にかかる旅費に充てられた。 ①観光振興を意識した各地の事例を概観すると、複数の館の連携により事業展開がなされるタイプ、自館への集客という個別性を顕著に意識するタイプ、地域の経済振興という俯瞰的観点を持ち合わせるタイプなど類型化へつながるような研究視点を抽出することができた。また、ミュージアム関係者へ傾倒するのではなく、観光事業者も調査対象とする必要があることが認められた。これらの点を意識して研究を進めることは、共有性・応用性・有効性・実践性を有するプログラムの構築につながるものと考えられた。 ②新潟市新津鉄道資料館の調査からは、ミュージアムへの入館者増を思考するのと同様に、ミュージアムが所在する地域への来訪者増という、所在エリアに人を呼び込むことを意識して地域と連携を進めていくという眼差しは、観光振興という「地域の維持」の解決策の1つに、ミュージアムが有効に機能する可能性の1つであることが明らかになった。 ③茅野市美術館の調査では、関連する「笹原観光まちづくり協議会」と「一般社団法人ちの観光まちづくり推進機構」を取り上げて考察した結果、資源の「見方」に関する期待と、資源の「見せ方」に関する期待という期待の異なりが抽出された。このような観光振興に関わる地域組織のミュージアムへのまなざしの細分化は、ミュージアムがその特性を活かして観光振興にコミットできることとできないこと、工夫できることや提案できることなどを思考する際の一助になることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画は、主として各地のミュージアムが展開する観光に関する事業の実践事例について、内容の把握・整理からその類型化を行うこと。そして、次年度以降の調査が円滑に進むよう現地へ赴き、関係機関と十分な調整を図ることであった。類型化については、その方向性を発表することができた。また、関係機関との調査調整に関しても、新潟市新津鉄道資料館・茅野市美術館において、調整のみでなく調査まで進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画の通りに研究を進めていく。ただし、可能な範囲において、他の好事例の把握につとめ、本研究に反映させたい。 なお、コロナウイルスの影響により、計画通りにミュージアムにおける調査が実施できない場合は、文献資料を中心に国内における最新の研究動向や国外の事例・研究動向にも目を向け、研究課題の克服のための知見の収集や本研究の学術的貢献範囲の明確化に努めることに注力し、次に備えることも想定しておく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年12月に、名桜大学(沖縄県)で行われた第34回日本観光研究学会において本研究の成果を発表したが、その際、付近に好事例(恩納村立博物館・今帰仁歴史文化センター)が認められたために計画を変更して調査を行った。本来は京都府内に所在するミュージアムを対象として調査を進める予定であったが、このように学会発表と同一行程内で調査を行うように計画を変更したため、未使用額が生じた。なお、京都府内に所在するミュージアムの調査を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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