本研究により、30年以上にも渡って支援者や活動家、研究者らが元「慰安婦」女性たちに実践してきたきめ細かなケアの蓄積は、戦争を未然に防ぐことに主眼を置いて来た既存の安全保障研究が見過ごしてきた、暴力を「受けた」人々に対する長期的な応答・ケアの必要性を提示してきたことが明らかとなった。そして被害者を取り巻くローカルなジェンダーやセクシュアリティ、人種、民族、当該国家間の政治・経済をめぐる権力関係と、そしてこの問題に向き合う者と被害者との間にある関係性が、被害者たちの尊厳回復のための営みの具体的あり様を決定することもまた明らかとなった。
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