研究課題/領域番号 |
19K20585
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
山本 由美子 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 准教授 (20716435)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生物(学) / 生物としてのヒト / ヒト外の生物 / 哺乳類 / 生殖工学 / 雌個体としての身体・細胞・生体組織 |
研究実績の概要 |
本研究は、生命や身体の資源化をめぐる今日的な生政治とその統治技法を明らかにすることを目的とする。今年度は、生命・科学技術・社会の関係軸をあらためて捉え返し、21世紀のバイオテクノロジーと生殖システムの変容/不変容を、生物としてのヒトおよびヒト外の生物の視点から考究した。また、先端テクノロジーの集大成となるであろう体外発生(ectogenesis)や人工子宮(artificial uterus)が想起され始めているが、その帰結は本来なら生身の生殖身体(女性身体)を不要とするはずである。しかし、それらが想起されればされるほど、その基礎研究の展望に向かうべく、バイオをめぐる諸学問領域での雌個体としての身体・細胞・生体組織が直接的/間接的に必要不可欠となる逆説を明らかにした。この意味でも、生身の女性身体と再生産(生殖)およびバイオテクノロジーの接続は、依然として堅固であり続けることを示した。さらに、これらのことは、バイオテクノロジーと経済活動の交差する部分を再編・拡張させながら進行していることが示唆された。 グローバルな資本主義を背景にわたしたちは、生のあり方や生命という概念、人間なるものの概念が根底から変わりつつある時代に直面していることを、バイオテクノロジーないし生殖工学からあらためて読み取ることができる。一方、近い将来にはありえないとしても、さほど遠からぬ将来を見据えたとき、理論上では先端バイオテクノロジーは生殖の身体(女性身体)を不要とする可能性を有している(と少なくとも想定できる)。このことと、〈産む/産まないの自由〉や〈生殖の権利〉はどう関与しうるのか、あるいはそれらになんらかの変更が求められることになるのか、思考すべきあらたな課題を整理し、生殖の生政治と個人の関係を再考する必要性をあらためて示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生命・科学技術・社会の関係軸を捉え返し、21世紀のバイオテクノロジーと生殖システムの変容/不変容を整理した単著書籍を準備中である。申請者の所属先業務および健康状態などの諸事情で今年度中の刊行は叶わないが、一定程度の進捗はある。最終年度である次年度の刊行に向けて、引き続き執筆を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果として、単著書籍全14章のうち現在第7章まで執筆が進んでいる。入稿編集校正等の出版スケジュールを遅延なく着実に遂行し、次年度内の出版をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費・謝金の必要性が生じなかったため。次年度使用額の使用は、最終年度に向けた成果発表にかかる費用に充てることとする。
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