研究課題/領域番号 |
19K20586
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研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
甲斐田 きよみ 文京学院大学, 外国語学部, 准教授 (20783608)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 世帯内意思決定 / ジェンダーと開発 / 女性のエンパワーメント / カメルーン / アフリカ農村経済 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、女性が収入を得ることが世帯内の意思決定プロセスにどのような影響を与えるか、カメルーンの農村を事例に検証することである。 これまでカメルーン中央州レキエ県で実施した現地調査から以下のことが明らかになった。調査対象地域のカメルーン農村は、カカオの一大産地である。男性の多くはカカオ畑を所有し、妻を始め世帯員が無償労働でカカオ畑の管理、カカオ豆の発酵や乾燥の作業を行い、年に1回、カカオ生産者組合を通じて仲買人に売却し収入を得ている。一方、女性は自家消費用の畑でキャッサバやプランテーン、葉物野菜を育て、余剰を販売して収入としている。女性が収入を得る手段が農業以外に限られているため、女性にとって土地を確保することが生計の確保に重要である。経済力があれば女性が土地を購入することは可能だが、多くの女性にとっては難しい。女性が両親から土地を相続できるか確かではないため、法律婚により夫の土地を得ることが確実な土地入手手段となる。法律婚の契約のためには夫側が婚資を支払う必要があるが、婚資を支払わず事実婚を続ける男性も多い。事実婚の状態では男性が亡くなると土地も家屋も男性の親戚が相続するため、妻は土地を失う。そのため婚姻関係を良好に維持し法律婚に同意させることが女性にとって重要となり、夫に対して強く意見を言うことを躊躇させていた。 令和3年度は、令和2年度に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大のため、予定していたカメルーンでの現地調査を実施できなかった。これまでのデータ分析、学会発表を元に論文を執筆・投稿した。『比較文化研究』145号に「カメルーン農村における女性の経済活動 -性別役割分業とジェンダー規範が与える影響 -」が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度同様に、新型コロナ感染症拡大により、カメルーンでのフィールドワークを実施することができなかった。そのため、新たに必要なデータ収集ができていないため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、今年度も新型コロナウイルスの感染拡大状況を考えるとカメルーンでの現地調査の実施は現時点では難しいと思われる。カメルーンへの入国が可能であっても、現地の農村の人々から見れば感染者の多い日本からの調査者を受け入れることは難しく、また、現地の人々のワクチン接種率が低いことを考えると、安全なインタビュー調査の実施は難しいと考えられる。本研究は現地調査で得られる質的データの分析を基に進めるものである。今後の推進方策としては、今年度にフィールド調査が実施できなければ、研究期間のサイドの延長を申請し、新型コロナウイルスが終息し、カメルーンでの現地調査が実施できるまで待つ。また、世帯内意思決定に関する先行研究の検討を引き続き進めていく。また、まだ論文化していないデータを元に、論文執筆を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症のためにカメルーンでのフィールドワークを行えていないため、現地調査にかかる費用分が未使用のままであるため。今年度、フィールドワークを実施できるのであれば、現地調査費として使用する。
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