研究課題/領域番号 |
19K20595
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
宮崎 正範 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (30634357)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 物性実験 / 量子ビーム / μSR / 複合アニオン / 構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、従来法では困難である『複合アニオン配列決定を可能にする量子ビーム複合解析による酸素スピン観測法を確立する』ことを目指すものである。物質内の核スピンとミュオンスピンによる共鳴現象(μ-LCR実験)から、核スピンとの距離を見積もり、物質中におけるミュオンサイトの特定をすることも1つの大きな柱としている。 本年は主に、同位体酸素17-O及び他の核スピンとミュオンとの共鳴を用いたμ-LCR実験によりミュオンサイトを推定する為の実験準備を行なった。まず試料準備については、東北大学金属材料研究所の共同利用研究を利用しμ-LCR実験、中性子実験で用いるLa2NiO4+δの大型単結晶の育成を行なった。磁化測定を行い、その温度依存性の振る舞いからδはおよそδ~0.1と推定された。次に同位体酸素17-Oへの置換について、本年は酸素同位体置換装置の組み立てを行なった。最後にμ-LCR実験については、J-PARCのミュオン実験施設に導入されているμSR分光器では、まだそれほどLCR実験が行われおらず実験に必要な基礎的な実験やデータがまだ十分蓄積されていない。そこでμ-LCR実験を行う為に必要なテスト実験に関する実験課題(P型)に応募し、採択された。テスト実験では、80 G程度の磁場でミュオンスピンとCu核スピンとの共鳴を起こすことが知られているCuをテスト試料として用いて行い、J-PARC MLF、S-1エリアにあるARTEMIS分光器で明瞭な信号が観測できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に必要な同位体酸素への置換装置の構築、本実験に向けてのμ-LCRのテスト実験を行っており、同位体に置換されておらず酸素の核スピンをほとんど含まないLa2CuO4やLa2NiO4+δ試料のμ-LCRのテスト実験も3月にJ-PARCで行なっており、現在解析を進めている。また、μ-LCR以外の研究でも、絶縁体に近い試料のホール係数測定が可能となったり、1eV程度のエネルギーギャップ測定が可能となる数GΩ程度までの高抵抗測定装置の立ち上げも行なっており、試料評価のための測定の充実を図っている。
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今後の研究の推進方策 |
La2NiO4+δ試料で同位体酸素に置換する為のアニール条件を調べると共に、その置換比率をラマン分光などで評価を行う。アニールされた試料は、酸素が不定比(δ=4.00でない)である可能があるため、磁化測定、電気抵抗測定、ホール効果測定などの諸物性測定から試料の素性を明らかにする。 J-PARCでのμ-LCR実験やカナダTRIUMF研究所でのμSR実験に向けて実験課題申請を行うなど、実験の準備を行う。TRIUMFでは、ミュオンナイトシフト測定の角度依存性の測定を行うことから、種々の方位でのカッティングが必要となるのでその試料準備を行う。現在、新型コロナウイルス(covid-19)の影響により、海外渡航が制限されているが、試料を送付し現地スタッフで代替実験を行う等の対応も検討されている。社会情勢を見極めながら研究を進めていきたいと考えている。
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