研究実績の概要 |
本研究の目的は、「量子ビームを用いて酸素スピンを観測」することであり、物質中におけるミュオンサイトを実験的に特定することが1つの大きな目標である。以下に成果を述べる。 1. La2CuO4において、零磁場μSR測定では磁気転移直下では1成分しか観測されていないにも関わらず、ミュオンナイトシフト測定からは2成分観測されたことから、酸素サイトからの磁気モーメントの可能性を示唆する結果を得た。より詳細で正確な解析を行うためにミュオンサイトを実験的に決定する必要がある。まず、J-PARCにて既知の銅試料を用いたμ-LCR実験を行い、十分な共鳴信号が得られることを確認した。次にLa2CuO4試料を用いて、Cu核の核四重極モーメントを通したμ-LCRのテスト実験を行い、~100Gあたりに非常に小さな共鳴信号らしきものを観測したが、その後の追実験からノイズであることが確かめられた。これは磁気転移温度を避けるために高い温度で測定をしていた為であり低い転移温度試料で引き続き測定されることが望まれる。 2. 複合アニオン化合物SrTaO2N及びBaTaO2Nの合成を行い、μSR、μ-LCR実験をJ-PARCで行った。O/Nサイト及び僅かな変位による非等価サイトを反映しそれぞれに対応したミュオンサイトからの少なくとも2つ以上のブロードな共鳴磁場ピークを観測することができた。 3.コロナ禍等により出張や大型実験施設での実験の制限を受け十分実施することができなかったが、(La,Sr)2TiO4等の新規合成を行い輸送特性を明らかにし、学会発表及び国際会議プロシーディングに成果をまとめた。 4.共同研究者との研究から、Sr2IrO4のXMCD測定から頂点酸素だけではなく面内酸素においてもさらに大きな磁気モーメントが観測され、これまでのμSRの結果と矛盾なく説明することができ、論文としてまとめられ掲載が決定した。
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