研究実績の概要 |
2019年度は、迅速溶媒抽出装置を構成する連続溶液化装置の改良を試みた。これまでに開発してきた連続溶液化装置は、90gNb(半減期14.6時間)や178aTa(半減期2.36時間)のような長寿命核種に対しては80%以上の高い溶液化効率を示すのに対し、90mNb(半減期18.8秒)のような短寿命核種の溶液化効率は約50%と低い。このような差が生じる原因として、(1)ガスジェット搬送された核反応生成物と水溶液の混合効率が悪い、(2)連続溶液化装置内に長寿命寿命核種が吸着し、蓄積されていることが考えられる。今回、核反応生成物の溶液化装置内の吸着を低減するため、装置内の容積を従来の23 マイクロLから1.8 マイクロLにした小型の連続溶液化装置を製作した。natZr(d,x)90m,gNbおよびnatHf(d,x)178aTaにより90m,gNbと178aTaを製造し、小型化連続溶液化装置を用いてこれらの核種の溶液化効率を調べた。その結果、短寿命核種である90mNbの溶液化効率は従来の装置とほぼ同程度であったが、長寿命核種である90gNbと178aTaの効率は従来の装置に比べ約20%減少した。これは装置の内容積を小さくしたことにより、装置内の長寿命核種の蓄積が減少したためであると考えられる。一方、短寿命核種の溶液化効率は従来装置と変わらなかったことから、短寿命核種の溶液化効率の低さはガスジェットガスと水溶液の混合に起因すると考えられる。半減期10秒のBhを高効率で溶液化するため、今後ガスジェットガスと水溶液の混合部を改良する予定である。
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