研究課題/領域番号 |
19K20606
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
三宅 泰斗 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (30804695)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 加速器質量分析 / 負イオン / セシウムスパッター型負イオン源 |
研究実績の概要 |
長半減期の超重元素が分布していると理論的に予測されている「安定の島」の元素を探索することは、原子モデルの理解や重元素合成の謎を解く手掛かりとして、原子核物理学や宇宙物理学において重要なテーマとされる。「安定の島」の領域に存在する元素が自然界に未だ崩壊せずに存在するか加速器を利用して合成できたとしても、その存在度は極めて低く、検出には高い精度を有する分析手法が必要であると考えられる。本研究では、極めて高い感度を有する分析法である加速器質量分析法で「安定の島」の元素を探索することに向けて、セシウムスパッター型負イオン源における負イオンの生成プロセスの研究を行うことを目的とする。 研究計画の1年目では、まず超重元素と化学的な性質が近いと考えられる同族の元素を利用して、負イオンを効率良く生成するための条件を調べる予定であった。負イオンの生成には試料の表面形状や科学形態が大きく影響すると考えられ、実験的に最適な条件を調査する。具体的には、試料への混合物、様々な表面形状の試料や試料ケースの材質を変えて実験を行う。 試料径や表面形状を変えた試料の作成のための試料ケースの製作を行ったが、実験装置の不具合から実験をするにまだ至っていない。 負イオンの生成プロセスについても、セシウムの衝突輻射モデルを利用した計算モデルの作成に着手した。 生成された負イオンの電子親和力を調べる手法として、レーザー光脱離法の開発にも取り組んだ。レーザー光脱離法では、負イオンである元素の電子親和力以上のエネルギーがレーザーにより与えられた際、負イオンが中性化されるという原理を利用した分析手法である。負イオンを効率よく中性化するには負イオンを減速し相互作用させることが重要である。まずは硫黄の負イオンを減速し、レーザーにより中性化することを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画の1年目には、負イオンを効率良く生成するための条件を調査するために、イオン源における負イオンの生成プロセスの研究に着手する予定であったが、イオン源の部品の予期せぬ故障や、製作した絶縁体の故障などが重なり、実験のための装置の立ち上げに計画よりも遅れが出ている。 負イオンの生成プロセスの研究については計算モデルを構築中である。
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今後の研究の推進方策 |
負イオン生成のための実験装置の準備がほぼ完了したため、今後は製作が完了した、試料径や表面形状を変えた試料の作成のための試料ケースを使用して実験を行い、条件を変えた場合の負イオンの生成について調査する。 計算モデルの構築も継続して行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
イオン源の部品の故障や絶縁体部品の破損など、装置に生じた不具合を解消するため、次年度に申請する予定であった助成金の前倒し申請を行い問題を解決した。 実験装置の構築はほぼ完了したため、翌年度分として請求した助成金は試料ケースの購入や実験試料など消耗品の購入を中心に使用する予定である。
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