研究実績の概要 |
本研究は、既存の金属加速管における加速管性能の限界を超える電子加速技術として、誘電体の高い電磁場蓄積能力と放電耐圧特性を応用した誘電体アシスト型加速(DAA)管を新たに提案し、既存の常伝導加速空洞の10倍以上高い加速効率を実現しつつ、高加速電界を励振可能であるということを実証することを目的としている。 本研究課題では、DAA管の①高効率化と②高電界励振に向けた数値計算・材料評価を重点的に取り組んだ。 ①に向けて、様々な誘電体材料の複素誘電率を用いて、DAA管へ応用した場合の最適形状を電磁場シミュレーションで見積り、高加速効率となる誘電体材料とその形状を検討した。その結果、比誘電率が約24のBa(Mg, Ta)O3セラミックスを用いることで、これまでのDAA管よりシャントインピーダンスを38%も向上することが可能であることが明らかとなった。 ②に向けて、既存のDAA管で高電界励振の障害となっているマルチパクタ放電の解決のため、様々な誘電体やTiNなどのコーティング表面の二次電子放出係数(SEY)の測定を行い、低SEY物質の探索を行った。チタンを含む高誘電率セラミックスにおいては、DAA管のプロトタイプ機に使用したマグネシアに比べ、SEYが半分以下と小さく、マルチパクタ放電の対策という面では優位性がある。また、ダイアモンドライクカーボン(DLC)コーティング表面においては、800eV以上のエネルギーの電子においては、SEY < 1と非常に小さく、DAA管に適した特性を有していることが明らかとなった。誘電体セルにDLCコーティングを施したDAA管を試作し、低電力試験を行った結果、DLCコーティングによる余剰の誘電損失は発生せず、高い加速効率を保持した。最終的には、当該DAA管の高電界試験によって、10MV/m以上の加速電界の励振に成功し、これまでより大幅に高い加速電界を実現した。
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