研究課題/領域番号 |
19K20611
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
西岡 仁也 筑波技術大学, 産業技術学部, 助教 (40712013)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デジタルサイネージ / モーショングラフィックス / ユニバーサルデザイン / 聴覚障害 |
研究実績の概要 |
聴覚障害者は災害時に音声によるアナウンスが聞き取りづらいため、周囲の状況を知る際直接人に聞くことが難しい緊急性の高い状況においては、デジタルサイネージやパーソナルメディアの画面表示に依存する可能性がある。本研究は動きと情報伝達効率の変化に着目し、聴覚障害者への読み取りやすさを配慮したモーショングラフィックスを用いた画面表示モデルの作成および評価実験を行う。 2019年度の研究実績として、デジタルサイネージにおけるモーショングラフィックスのモデルを作成し、聴覚障害を持つ男女29名の学生を被験者として実験を実施した。予備調査を兼ねた実験として、実験環境は画面表示の変化に集中できるよう、24インチのディスプレイから70cm程度離れた場所に被験者が座る形をとった。 表示する情報の量、言語、文字の大きさ、絵情報、はデジタルサイネージ災害コンテンツガイドラインを踏まえた駅構内を想定したモデルを作成した。作成した動きはフェードインフェードアウトを伴うもの、移動を伴うもの、点滅を伴うもの、動かないものの4種類とし、動きを与えた対象は、災害の種類、出口の番号、目的地の3種類とした。被験者にはそれぞれの組み合わせの内12種類をランダムに5秒間見せた。モデルの数及び時間は被験者が画面内の位置関係を覚えて実験に影響が出ないよう重複したバリエーションを減らすため及び、目の疲れに配慮して決定した。 実験の評価として、内容の理解を確認するためのアンケートタスクの点数、注視点の計測、主観評価のデータを収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究計画は実験用モデルの作成および実験の実施である。 実験用モデルは、デジタルサイネージ災害コンテンツガイドラインを踏まえ、駅構内を想定し当初の予定通りに作成した。 実験は聴覚障害を持つ男女29名の学生を被験者として実験を実施した。実験の評価として、内容の理解を確認するためのアンケートタスクの点数、注視点の計測、主観評価のデータを収集した。 実験では表示内容に対する動きの影響を調査するため、被験者を座らせて机の上のモニタを注視する実験を実施したが、大画面に映し出されたモデルを離れた場所から立って注視しての評価は未達成である。 以上のことから本研究は概ね順調に進展しているが、目前のモニタに集中できる場合と、環境の一部としてモニタがある場合の動きの影響の差異を検証することで、より精緻なデータが得られると考え、実験を細分化し次年度以降に渡って実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は2019年度に得られた知見を元に分析および、付与する動きの精査に加え、大画面を対象としたデジタルサイネージによる実験の実施および、スマートフォンなどのパーソナルメディア常に表示するモデルの作成及び評価実験を行う。 モデルの分類はデジタルサイネージと同様に行うが、メディアの違いを考慮し最適な表示方法を探るための実験および評価を行う。手元で操作するパーソナルメディアの特性からインタラクションを用いたモデルを作成する。緊急時であるため複雑な構造にはせず、動きの有無によるコンテンツ内の誘導と操作速度および理解への影響を調査する。評価の方法はデジタルサイネージと同様に読み取り内容を確認するアンケート課題、注視点計測および主観による評価のほか時間計測やストレス調査を行い質的、量的な面から画面内の動きと情報伝達の相関および、動きによる心地よさと不快さの境界を明らかにする。 これらから得られた知見をもとに学会発表、学術論文の執筆を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内にはモデルの作成および実験に集中したため、学会発表及び取材のための旅費および、その他経費を使用しなかったため次年度使用額が生じた。 2020年度は成果の発表または取材のための旅費および、実験用機材の調達ならびに謝金、その他の経費を使用する予定である。
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