音の大きさの評価には男女差が存在する要因として, (1)言葉による音の大きさの判断基準の男女差と(2)音圧と感覚量の対応関係 (ラウドネス) における男女差,(3)文化的背景の影響の3点に着目して検討を続けてきた。2019年度は(2)の音圧と感覚量の対応関係における男女差に着目し,より細かい条件で音の大きさ評価実験を行った。2020年度は(3)の文化的背景の影響に着目してマレーシア人を対象とした実験を行った。これらの結果,いずれの影響も明確ではないことが分かった。 このような結果を踏まえ,今年度は(1)言葉による音の大きさの判断基準の男女差および(2)音圧と感覚量の対応関係における男女差に関してより検討を深めるために,日本人を対象として評価条件を変更した音の大きさ評価実験を行った。その結果,評価条件を変更した場合でも(2)の音圧と感覚量の対応関係における男女差は明確ではなかった。このことから, (1)の言葉による音の大きさの判断基準の男女差が音の大きさの評価における男女差が生じる要因として強く影響する可能性が示された。なお,「言葉による評価」という脳のより高次な処理における男女差については,これまでの検討では明らかにできていない。さらに,これまで対象としていなかった聴力レベルのような感覚器官における男女差が影響する可能性も考えられる。そのため,今後の課題としてこれらの男女差に着目した検討を調査を続け,要因の解明を目指す。
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