本研究では、集約化が計画されている公的集合住宅団地において、団地の共用空間マネジメントを団地居住者と団地周辺居住者が協働で行うことで、団地内外居住者がネットワークされた拡張型団地コミュニティが形成可能か検証した。主な研究成果は以下の通りである。 ①団地自治会、UR都市機構、大学関係者等による「あけテラ会議」を定期的に開催し、三者が協働でプロジェクトを進めていくための体制を構築した。 ②18歳以上の全団地居住者を対象に実施したアンケートの結果を分析した。団地居住者の地域活動への参加状況と参加意向を整理することで類型化し、各類型ごとの居住者特性と地域活動に参加しやすくなる条件を明らかにした。その成果をまとめた論文が、Journal of Asian Architecture and Building Engineering(2022年1月)に掲載された。 ③団地内外居住者が共用空間を活用するためのオリジナル屋台を開発・制作した。 ④団地の集会所とその周辺のオープンスペースを活用した実証実験およびその内容を企画するためのワークショップを開催することで、団地居住者の約30%が参加を希望する開かれたコミュニティ活動のプログラム開発、団地内外の新たなプレイヤーの発掘、団地居住者の主体性向上と役割創出などの成果を得た。 ⑤一方、企画・運営の負担が大きいこと、日常生活でコミュニケーションや助け合いが必要な棟単位のコミュニティ形成が必要なこと、このような場に気軽に参加できない団地居住者が一定数いることが団地居住者へのヒアリング調査から明らかとなった。さらには、感染症の影響により、大人数で集まる場の形成に課題が生じた。以上より、日常的に、小さな単位で、気軽に集まれるマイクロパブリック(超小規模地域コミュニティ拠点)の構築と積極性が低い団地居住者の参加を促すアウトリーチの必要性が示された。
|