研究課題/領域番号 |
19K20617
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
下村 萌 九州大学, 芸術工学研究院, 助教 (50816048)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 行政デザイン / サービスデザイン / 子育て / フィンランド / 行政サービス |
研究実績の概要 |
本年度は、これまでに開発した子育て支援ツール「子育てサービスマップ」の本格的な社会実装が始まった。このサービスマップを利用した市民へアンケート調査を実施し、検証を行った。回答者は福津市に在住する妊娠中または子育て中の保護者で53名から有効回答を得た。その結果、男性利用者や子育て初心者の方へ有効性が認められた他、利用者が子育てサービスの全体的な理解に貢献したことを確認した。今後はオンライン化や医療機関を巻き込んだ配布方法の展開が示唆された。福津市のアンケート調査、およびフィンランドの市民調査で得られたDXへの可能性を探るため、フィンランドの研究者と協力してフィンランドの行政機関におけるサービスデザインの応用事例についてインタビュー調査を行った。同様に日本では文献により応用事例の調査を行った。「子育てサービスマップ」の展開として、「福津市こどもの国 子育て支援ガイドブック」を作成し、2021年12月に発行した。これは、「子育てサービスマップ」に掲載できなかったサービスの詳細情報や、任意の方を対象にしたサービスなども含まれる。利用者は市民だけでなく、子育て支援を担当する行政職員の手引きとしても活用されている。また、「子育てサービスマップ」で整理した各種サービス情報を福津市公式ウェブサイトへ掲載し、他自治体への参考事例として一般公開することができた。 これまでに行った研究成果を国際学会International Association of Societies of Design Research (IASDR) 2021で発表した。加えて、国際学術誌The Design Journalへ投稿中である。「子育てサービスマップ」は新聞や自治体広報誌などで広く取り上げられたほか、2021年度(第15回)キッズデザイン賞を受賞した。本年度の研究成果は、博士論文の一部として執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究実施計画は、日本の現状に適した子育て支援モデルを展開することであった。それに対し、研究実績で示すように福津市と開発した子育て支援ツールとして、利用者や行政職員の検証を得ながら改良し、子育てサービスマップ、ガイドブック、ウェブサイトを展開することができた。また、国際学会やアワード受賞により、広く社会実装の成果を発表することができ、他自治体からの問い合わせも得られた。以上のことから、研究はおおむね順調に推移していると言える。 当初の計画ではフィンランド市民の子育て環境や子育て関連施設の現地調査も行う予定であったが、新型コロナウイルスの影響により現地調査は昨年度に続き延期した。フィンランドでの現地調査ができるようになれば、すぐに調査開始できるよう準備を進める。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していたフィンランドの現地調査の実施を検討しているが、コロナウイルスの状況等も踏まえて実現可能性を検討する。引き続き研究成果を国際ジャーナルに投稿するなど成果公表に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィンランド市民の子育て環境や子育て関連施設の現地調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス等の影響により渡航旅費を使用しなかった。来年度に、渡航可能になれば現地調査の渡航費用、および研究成果を発表するための費用として使用予定である。
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