本研究では、申請者が提案した評価モデルである「マルチモーダル干渉構造モデル」の高度化を目的とし、3つの研究課題を遂行することで、評価に関わる多層的な観点からの干渉要因と効果についての検討を行った。最終年度の研究課題については、親近感(馴染みがもたらす情動)による干渉効果の確認を目的とする検証課題の実施が予定されていたが、新型コロナウイルスで対面による検証実験実施ができない状況が続いたため、国内外での比較研究を含む課題遂行期間を1年延長し実施した。具体的には、2年間の研究成果を踏まえ、親近感が知覚へ与える影響について検証するため、日本vs文化圏の比較を目的に日本人20名とフィンランド人20名を対象にした検証実験を行った。結果では、刺激に対する親近感の高いグループの評価が、親近感の低いグループより、知覚刺激に対する評価が低いこと、また、爽やかさや甘さなどのような知覚につながる評価項目においてのグループ間の評価の差異より、嗜好のような直感的な評価項目においてグループ間の評価の差異が大きいことを確認した。また、視覚と嗅覚刺激を用いた干渉構造においては、否定的な視覚情報と肯定的な嗅覚情報の組み合わせのみで有意差が見られた上(p=0.0005)、親近感の高いグループの評価が親近感の低いグループのより低かったことから、刺激に対する高い親近感は、視覚情報のように、より明確で確実な刺激に干渉しやすい可能性が示された。本研究で高度化した「マルチモーダル干渉構造モデル」については、2022年度9月にイギリスロンドンにて開催された、国際学会 E&PDEにて優秀論文Global Award - Innovationに選ばれ、Sensory Perception and Design分野にて提案の新規性と独創性から、その有効性が認められている。
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