研究課題/領域番号 |
19K20620
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
木下 史也 富山県立大学, 工学部, 助教 (20800907)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 映像酔い / バーチャルリアリティ / 周辺視野 / 背景要素 / 局所脳血流量 / 自律神経機能検査 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,映像酔いを引き起こす因子として周辺視野からの情報が大きく影響するという仮説を唱え,周辺視野領域の画像要素を任意に変更することができるVR映像コンテンツを開発し,このシステムを利用している際の生体情報を定量的に評価することで映像酔いを引き起こす因子の特定および,その軽減・予防方法の確立を目指す. 平成31年度では,球体が画面内を複雑に動き回る立体映像コンテンツを開発し,若年者群14名を対象にコンテンツ使用時の局所脳血流を計測した.開発した映像コンテンツには背景要素を付加したものと背景要素がないものの2種類を用意し,コンテンツ利用者にはそれぞれの映像に対し,球体を目で追って視聴する追従視と画面全体を視聴する周辺視の2種類の視聴方法で各コンテンツを視聴させた.測定機器は島津製作所社製のLABNIRSを使用し,測定項目はoxy-Hb,deoxy-Hb,total-Hbの変化量とした.NIRSプローブは前頭前野,左右側頭葉,後頭葉に各12チャネルずつ配置し,コンテンツの提示には55インチの3Dディスプレイを使用した.各コンテンツ視聴時で追従視時から周辺視時に局所脳血流量が有意に変動した領域を比較すると,背景要素のないコンテンツ視聴時においては前頭前野,左右側頭葉,後頭葉のすべての領域で局所脳血流量は増大した.一方,背景要素を付加したコンテンツ視聴時では後頭葉でのみ局所脳血流量が増大したが,それ以外の領域では一貫した傾向はみられなかった.これはコンテンツの背景要素が後頭葉での視覚情報処理に影響を及ぼしている可能性を示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度では,背景要素の有無を因子とした立体映像コンテンツを作成し,背景要素が脳血行動態に影響を及ぼしていることを確認した.今後はこのコンテンツを改良し,さらに細かく因子の検討を行っていく.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度では,昨年度作成した立体映像コンテンツを改良し,オブジェクトの大きさや形,空間内の移動速度を任意に変更することで,脳機能・自律神経機能に影響を及ぼす画像要素やその閾値を検証する.また,これらの映像コンテンツ使用時の視線情報も同時計測することで,追従視時と周辺視時の視線情報の差異についても検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成31年度購入予定であった計測機器を令和2年度の購入予定としたため.
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