本研究は、米国ニューヨーク市沿岸域を対象とし、ハリケーンサンディーによる高潮等の水災害からの復興を目指す減災デザイン「Rebuild by Design、以下RBD)」のBIG-Uプロジェクトを対象とし、プロジェクトの段階に合わせた減災の戦略と空間デザイン、デザイン提案や実装の枠組みを整理し、都市空間スケールでの減災デザインの実装に向けた知見を得ることを目的とした。本研究で対象としたRBDは減災デザインとして先進的な取り組みである一方、全国レベルで展開されたコンペティションや断片的な情報共有にとどまり、段階的に進行したプロジェクト全体の枠組みや内容などが捉えきれていない状況にあった。 このような状況をふまえ、本研究では「減災に向けた戦略と空間デザイン」そして、「組織体制」や「計画間の連動」の解明を目指し、報告書や資料と現地でのヒアリング等に基づき、デザインコンペ段階と実装段階の提案内容を整理して減災デザイン実装の枠組みとして分析を行った。本研究の成果としてはデザイン・コンペ段階のデザイナーを主体とした官学民連携のチームの体制と3つの空間デザインの取り組み内容について明らかにした上で、それらが実装段階では「ESCR: East Side Coastal Resiliency」と「LMCR:Lower Manhattan Coastal Resiliency」の2つのプロジェクトに大きく分かれ、より自治体主導の官民連携に移行するプロセスを上位・関連計画、対象域、組織体制、戦略、空間デザインという切り口で整理した点が本研究の成果であるといえる。言い換えると、個別・縦割りに分化される傾向のある災害復興プロジェクトを都市スケールの減災デザインという視点から、統合的に枠組みをとらえた研究である。
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