研究実績の概要 |
2019年度の研究実績は次の3点である.1)創造性に関する実証研究のまとめ,2)関連文献の調査,3)1と2を踏まえた予備的考察の学会発表.1では,建築の設計過程を対象として,資料分析と建築家へのインタビュー調査を行なった.その結果,建築の設計案がまとまる過程では,複数の与件への回答を内包した,高次の環境構造が出現している様子が確認された.また,高次の環境構造が出現することで,建築家には,設計への積極的な関与,すなわち設計意図の出現がもたらされているようであった.以上の結果を踏まえて,創造性を生態学的な視点(Gibson, J., 1979他)から考察し,動物と環境との非対称な関係を吟味した. 2では,創造性を生態学的に理解しようとする際に必要な文献の調査を行った.なかでも,知覚と行為への生態学的アプローチ(Gibson, J., 1966, 1979他)が提出されるまでの過程,すなわち20世紀前半から中頃にかけての文献を調査した.3では,1と2を踏まえて行った,予備的考察の結果を報告した.以上の成果は,1については査読付き学術論文1件として,2と3については国際学会発表1件と,国内学会発表3件として,それぞれ報告された.発表先は,認知科学誌(日本認知科学会編),国際生態心理学会(International Conference on Perception and Action),Designシンポジウムである.
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