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2019 年度 実施状況報告書

『源氏物語』の計量的な文体研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K20627
研究機関お茶の水女子大学

研究代表者

土山 玄  お茶の水女子大学, 文理融合 AI・データサイエンスセンター, 特任講師 (00755390)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード計量文献学 / 文化情報学 / テキストマイニング / 源氏物語
研究実績の概要

『源氏物語』は紫式部の手によって執筆されたとする日本最古の長編物語であり、現在まで広く読み継がれ、また研究されてきた。本研究では『源氏物語』の写本の1つである青表紙本系の大島本のテキストデータを対象に統計的な手法を用いることで、『源氏物語』の作者問題および成立過程の問題について検討を加える。平成31年度はこれらの研究課題の準備段階として『源氏物語』の各巻の計量的な特徴を明らかにするために計量分析を行った。
一般に、『源氏物語』の54巻は第1巻「桐壺」から第33巻「藤裏葉」を第一部、第34巻「若菜上」から第41巻「幻」を第二部、第42巻「匂宮」から第54巻「夢浮橋」を第三部とする三部で構成されると論じられている。そこで、本研究においてもこの三部構成説に基づき、各部の文体的特徴に関わる特徴量の出現傾向を調査した。これについては大阪大学で開催された日本行動計量学会第47回大会で発表した。なお、文体的特徴とは著者の文章表現における習慣的かつ形式的な特徴であり、本研究においては品詞の比率、単語の出現率、単語の隣接共起パターンの出現率、単語の文字数に係わる情報を文体的特徴としている。次いで、各巻における文体的特徴に関わる特徴量の出現傾向を調査し、その結果を国立国語研究所で開催された計量国語学会第63回大会において発表した。また、特徴語と称される出現傾向が他の諸巻に比べ顕著に相違する単語の抽出方法を提案し、その結果を佐賀大学において開催された第122回情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会で報告した。また、これまでの研究成果をとりまとめた論考が『文化情報学事典』(勉誠出版)に採録され、12月に刊行された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究における主要な研究課題は作者に関する問題と成立過程に関する問題の2つである。研究実績の概要で報告したように、この2つの課題についての検討を加えるための準備段階の研究は今年度の研究を通じて、およそ完了したと言える。また、多様な特徴量を採り上げ、多角的に計量分析を行ったことにより、『源氏物語』の作者問題に関する計量的な観点に基づく議論を進められる段階に至っている。したがって、研究は予定通り進捗していると言える。

今後の研究の推進方策

本研究は次の3つの段階を経て行われる。(1) 『源氏物語』各巻の文体的特徴を明らかにする、(2) 『源氏物語』とその補作の文体を比較し検討を加える、(3) 『源氏物語』各巻の文体的特徴の関係性を明らかにする、という3段階である。研究概要の実績および現在までの進捗状況において報告したように、平成31年度までに(1) 『源氏物語』各巻の文体的特徴について計量分析を加えた。今後は(2)以降の研究テーマについて分析を行う。『源氏物語』の補作である『山路の露』及び『雲隠六帖』のテキストデータを使用する。分析を通じて、補作であるこれら2作品は『源氏物語』のどのような文体的特徴を吸収し模倣しているのか明らかにする。最後に、(3) では (1) および (2) において得られた『源氏物語』各巻における計量的な文体的特徴、作者が異なる場合に認められる文体的特徴の出現傾向の相違についての知見をもとに、文体という観点から『源氏物語』各巻の類似性を指摘する。これによって、『源氏物語』の作者が単独であるのかあるいは複数であるのか、また『源氏物語』54巻の成立順序を計量的な判断に基づき解明する。

次年度使用額が生じた理由

平成31年度に購入を予定していたコンピュータよりも低価格で高性能の製品が販売され、その製品を購入したため。生じた次年度使用額については、機械学習関連の専門書を購入することを予定している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 『源氏物語』及びその補作における特徴語句抽出の試み2020

    • 著者名/発表者名
      土山玄
    • 雑誌名

      研究報告人文科学とコンピュータ

      巻: 2020(3) ページ: 1-5

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 『源氏物語』及びその補作における特徴語句抽出の試み2020

    • 著者名/発表者名
      土山玄
    • 学会等名
      第122回情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会
  • [学会発表] 計量分析による『源氏物語』三部構成説の検討2019

    • 著者名/発表者名
      土山玄
    • 学会等名
      日本行動計量学会第47回大会
  • [学会発表] 助動詞の出現傾向に基づく『源氏物語』各巻の分類2019

    • 著者名/発表者名
      土山玄
    • 学会等名
      計量国語学会第63回大会
  • [図書] 文化情報学事典2019

    • 著者名/発表者名
      土山玄
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      勉誠出版
    • ISBN
      9784585200710

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公開日: 2021-01-27  

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