【研究目的】本研究では、西浦田楽の保存・継承を支援することを目指し、次の2点を明らかにする。(1)文献調査および聞き取り調査、形の知識構造の枠組みを用いた知識の体系化を通して、「教え」の知識構造、どの年代でも変わらず継承されている情報を明らかにする。(2)演目の VR 映像アーカイブの構築を通して、西浦田楽の記述に適したデータ構造を明らかにする。 【当初計画】2019年度は文献調査および関係者への聞き取り調査、各演目の「教え」の体系化、演目のVR映像コンテンツ化を実施する。2020年度は「教え」を正確に記述できるメタデータ語彙の検討、映像アーカイブ化を行う。 【2023年度実績】(1)に関連して、オントロジーを用いて「教え」を分類する方法を検討した。しかし、前年度に続きCOVID-19の影響により、現地での聞き取り調査等が行えず、前年度の課題がそのまま残った。(2)に関連して、明確に顔が映る見学者だけにモザイク処理を行うこととしたが、視聴時の没入感の課題が残っている。その他、前年度に続き、本研究の波及効果として、観光分野への応用可能性を検討した。 【研究期間全体の成果】知識構造の記述において、西浦田楽の知識は日本剣道形のように、知識を上位下位の関係を持たせて階層的に記述することは難しいことがわかった。メタデータの設計においては、既存語彙では正確に演目を表現できず、独自にメタデータ語彙を定義する必要がある等の課題を明らかにした。VR動画として舞の奉納の様子を明瞭に記録できた。しかし、見学者の肖像権処理に加え、カメラの設置位置の関係によってステッチング処理が難しい部分があり、機材の設置方法について課題が残った。
|