研究課題/領域番号 |
19K20640
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
羽鳥 康裕 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (30750955)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多感覚情報処理 / 予測 / 行動 |
研究実績の概要 |
生体に入力される感覚情報は時間的・空間的な統計的性質を有している。例えば、外界は急激に変化しない。現在の刺激だけでなく、直近に観察した刺激を情報処理に利用することで、知覚を安定させることができる。また、自身の行動は将来生じる感覚情報の変化を予測する上で重要である。本研究は、感覚刺激の時間的な統合処理過程のメカニズムの検討を目的としている。 時間的な統合が頭部を基準とした座標系で行われるのか、網膜を基準とした座標系で行われるのかを検討した。実験参加者は一様な背景上に呈示される実験刺激を、頭部方向を変えて観察した。網膜を基準とした統合が行われているのであれば、頭部方向に依らず、網膜上で同じ位置にある物体の情報が統合される。頭部方向を基準としているならば、頭部方向が同じ場合に統合が生じる。実験結果は網膜座標系に基づく統合を示唆するものであった。しかし、一様な背景では頭部方向や刺激の環境中の位置が分かりにくかったため、網膜座標系で統合が行われたことも考えられる。今後は一様ではない背景を用いた実験を行う予定である。 外界のモデルに基づく予測が感覚情報処理に与える影響を調査するために、視覚情報から予測される触覚情報に基づく触覚の感度調整メカニズムを検討した。具体的には、ヘッドマウントディスプレイと触覚デバイスによって、予測と実際の触覚情報が異なる状況を作り、感度調整の特性を測るための実験を行った。実験参加者は十分ではないが、予測と実際の触覚情報にずれがある場合には、触覚の感度が下がる傾向が見られた。実験参加者を増やす予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大により、人間を対象とした実験の実施が難しい状況が続いていたが、感染症対策を講じることで実験の実施が可能となったため、予定していた実験を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
年度の前半では追加の実験を行い、感覚情報の時間的な統合過程や予測に基づく感度調整のメカニズムを検討する。年度の後半では研究成果の取りまとめを行い、論文として発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がオンライン開催されたことにより、旅費の支出がなくなったため差額が生じた。次年度も学会はオンライン開催されることが見込まれるため、謝金や論文公表にかかる費用として使用する予定である。
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