研究課題
生体に入力される感覚情報は時間的・空間的な統計的性質を有している。例えば、建物や信号機などの配置は急激に変化することはなく、同じ情報が繰り返し呈示される。人間は繰り返し呈示される刺激から、空間配置(文脈)の情報を取り出し、学習していることが知られている。学習した空間配置の情報は効率的な探索に寄与する。本研究は、空間配置の学習過程をシミュレーション実験により検討した。前年度までに、画像から大域的な特徴を抽出し、探索対象の位置との関係を学習するモデルを構築していた。このモデルは、刺激の種類による学習速度の違いを再現できることを確認していた。今年度は、提案したモデルの記憶容量に関係するパラメータの役割を検討するためのシミュレーションを実施した。先行研究では、空間配置を示す手がかりの出現頻度が低い場合に、空間配置を学習できないことが報告されている。提案したモデルの記憶容量を大きくした場合、先行研究の結果を再現できなかったが、記憶容量を小さくした場合には再現できた。これは、記憶容量の制限が、空間配置の学習における制約として重要な役割を果たしていることを示唆する。顕著でない情報が繰り返される場合の学習についてもシミュレーション実験を行った。先行研究では、顕著でない情報が繰り返させる場合でも学習が生じることが報告されている。先行研究と同様の条件でシミュレーション実験を行ったところ、モデルは心理実験の結果を再現した。これらの結果をまとめて、論文の再投稿を行った。
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Attention, Perception, & Psychophysics
巻: 85 ページ: 1425~1436
10.3758/s13414-023-02740-2