研究実績の概要 |
令和元年度は、群れの運動の包括的なアルゴリズムを解明するために、鮎の群れの分析を詳細に行い以下の事実を明らかにし学会などで発表を行った。(1)統合情報理論を用いて、鮎の群れのリーダーシップは群れのサイズが4匹以上になった時に、初めて現れることを明らかにした。この結果は、これまでの情報量(相互情報量・移動エントロピー)では観察されなかった結果である。さらに、同様の結果はBOIDやランダムマルコフモデルでは得られることはなかった。以上の結果は、海外論文雑誌に採択されている(Niizato et al., 2020)。(2)さらに、群れのサイズがに2匹から5匹の群れを詳細に分析することで、これらの群れには因果構造上それぞれ明確な違いがあることも明らかにした。具体的には、2匹はchacing, 3匹の場合はfission-fusion, 4匹の場合はリーダーシップ、5匹の場合はinteractiveという分類である。このような少数の群れがただの程度の違いではなく、質的な違いを内包していることを指摘した研究はこれまでになかったものである。この研究は現在国際論文雑誌に投稿中である。(3)(1), (2)で得られた考察を「砂山のパラドクス」のもとに解読することで、「いつから群れをなすのか」という問いを考察した。砂山のパラドクスとは、均質的な連続操作が質的な跳躍を帰結するという、部分と全体を考察する上で避けることができない問題である。質的な非連続性という観点とバラバラでありかつ群れであるという観点から、パラドクスの前提が破られることを示し、これまでの問題に解決を与えた。本研究については, SE|WARM2019で発表され、Best Paper Awardのファイナリストに選出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在2つの研究が進行中である。一つ目は、包括的アルゴリズムの三次元空間への拡張である。これについては概ね順調に進行中である。現在、プロトタイプとなるモデル自体は完成しており、外見的な挙動も我々が作成した2次元モデルと非常に近しい振る舞いをすることが確認されている。
2つ目は、群れ内部のダイナミクスを明らかにするため、移動エントロピーを用いた群れ内部の相互作用の分析(Fukushima et al, 2019)・群れのクラスタリング基準の分析が同時並行的に進んでいる。これらについてはある程度の結果は出てきており、一部は国内学会において発表されている。また、上に述べたように、鮎の群れの分析を詳細に行い、鮎の群れのリーダーシップが群れのサイズが4匹以上になった時に、初めて現れることを明らかにし、群れのサイズが2匹から5匹の群れを詳細に分析することで、これらの群れには因果構造上それぞれ明確な違いがあることも明らかにした。具体的には、2匹はchacing, 3匹の場合はfission-fusion, 4匹の場合はリーダーシップ、5匹の場合はinteractiveという分類ができることを明らかにした。
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