研究課題/領域番号 |
19K20643
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
勝 野吏子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (30779955)
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研究期間 (年度) |
2020-02-01 – 2023-03-31
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キーワード | 協働行為 / 動作同期 / ラット / we-mode / 比較認知科学 |
研究実績の概要 |
ヒトは他者と協働行為を行う際には、他者の目的や他者が担当する動作に関する表象を共有し、相手と動作を分担したり、タイミングをあわせたりして、目的を達成する。本研究の目的は、このような協働行為を支える認知的基盤について系統発生的な起源を探ることである。ヒトとラットを対象とした協働行為実験を行い、相手の目的や動作の表象を共有するかを検討する。さらに、その共有の度合いに、相手との親密さといった相手との関係性は影響するのか、協働行為により一体感が生じ、相手に対する協力的な態度や親密さが高まるのかを検討する。 今年度はラットを対象とした行動実験を行った。2種類の刺激とそれに対する反応を学習した後、この二肢選択課題を2者で隣り合って分担するときに、ヒトでは相手が担当すべき刺激反応対も表象するために、相手が行うべき動作を誤って産出してしまうことがある(共同サイモン効果)。ラットにおいてこの共同サイモン課題を聴覚刺激により行い、相手の担当する刺激―反応マッピングの表象を共有しているのかを検討した。これまでに6個体の訓練が完了し、共同課題を実施した。同居個体と2個体で隣り合って課題を行った条件では、共同サイモン効果が確認された。この成果は日本動物心理学会で報告され、論文としてまとめて国際誌へ投稿する準備を行っている。さらに、協働行為による相手との親密さの高まりを検討するために、情動伝染の実験準備を行った。相手を観察することで負の情動伝染が生じる刺激の条件を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染対策のため実験開始が遅くなり、実験時間も短縮された。共同課題における個体間関係の影響の検討や、課題後の情動伝染実験の実施に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は個体数を増やして実験を継続し、ペア間の属性や親密さが共同サイモン効果の度合いに及ぼす影響を検討する。共同課題実験が終了した個体について、共同課題が相手への信頼性や親密さを高めるのかを調べるための、情動伝染実験や協力実験を実施する。収集したデータの分析をすすめ、論文執筆や学会発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会がすべてオンライン開催となり、出張旅費が支出されなかった。次年度に学会が現地開催される場合には出張旅費、あるいは論文投稿費用として使用する。
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