研究課題
本研究では「枠効果」と呼ばれるヒトの3D知覚に関する現象を調べている.枠効果とは,枠を観察対象となる2D映像の奥もしくは手前に配置することで,2D映像から与えられる「奥行き感」が枠が無いときと比較し増加する,という現象である.この枠効果を用いることにより,既存の3D刺激提示法の一つである「両眼視差」を用いた方法で生じる「3D映像観察時の不快感・酔い」を改善できる可能性がある.本年度は,近年広く普及したヘッドマウントディスプレイ(HMD)にその研究対象を広げ,枠効果について調べた.その結果,HMD内で枠を用いることで,3Dディスプレイを用いたときとほぼ同様の効果が確認された.例えば,今回使用した代表的な絵画的奥行き手がかり時は「線遠近」「テクスチャ勾配」「陰影」「遮蔽」であるが,この中でも特に「テクスチャ勾配」に対して,この枠効果の影響が見られた.ただ,この「テクスチャ勾配」に「線遠近」を組み合わせた画像を用いても,その効果の大きさはほとんど変わらなかったため,この大きさが絵画的奥行き手がかりの単純な足し合わせで決まるわけではないことが示唆された.また「陰影」や「遮蔽」に対しては,枠効果が無い,もしくは小さかったので,これらの刺激に対して奥行き感を増加させるためには何かしらの工夫が必要であると考えられる.主なHMDの主な3D提示法は「両眼視差」であることから,これまでに得られた知見は,この研究の当初の目的の一つである「両眼視差と枠効果を混ぜ合わせたハイブリット法」が実現可能であることを示唆している.
2: おおむね順調に進展している
前年度に引き続き,概ね実験を滞りなく行うことができた.その結果,当初から計画していた研究を行えた.また,実験結果の一部は発表することができた.このため,全体の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した.
当初予定していた研究計画に大きな変更はない.前年度に引き続き,covid-19の影響を考慮し,実験の一部はオンラインで行う予定である.
covid-19の影響により,一部納品が間に合わなかった実験装置などがあったため.次年度では基本的には同じ用途として用いる予定である.
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Attention, Perception, & Psychophysics
巻: 83 ページ: 3216~3226
10.3758/s13414-021-02345-7