研究課題/領域番号 |
19K20646
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
ユ リラ 京都大学, 野生動物研究センター, 特定助教 (60760709)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 発達 / 乳幼児 / 社会的認知 / 認知科学 / リズム / 協調行動 / 自己認識 / 時間的随伴性 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒト特有のリズムを合わせる行動特性が、「いつ」「どのように」創発・発達するのかを明らかにすることを目的とする。本年度は、乳幼児18か月児から42か月児を対象に、他個体とリズムを合わせる行動特性がいつ頃から観察されるのかを検討した。具体的には、共同太鼓叩き場面を用いて、自然に誘発される乳幼児のリズミックな運動を調べた。太鼓の裏面には振動センサーを装着し、太鼓が叩かれる時間とその叩きによる振動の大きさを自動的に記録する実験装置を開発してデータ収集を行った。これまでの先行研究では、生後2歳半ごろから他者の行為のリズムに合わせた運動制御が可能となると結論づけている。しかし、本研究結果から、1歳半の乳幼児から外部リズム音に対してドラム運動の随伴的変化が見られることが分かった。さらに、2歳半の時点から、ヒト成人で見られる迅速で正確なリズム合わせ行動が見られることが分かった。 これらの研究成果は国内の学術大会ですでに発表しており、現在、国際科学誌投稿に向けて準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に記載した予定通り順調に進んでいる。変更点があるとしたら、当初の予定では、3つの月歳群(18、30、42か月児)を対象に共同太鼓叩き場面を用いた研究課題を行う予定であった。しかし、本研究結果から、18か月児から30か月児の間で大きな行動変化がみられたため、当初予定になかった24か月児を対象に追加実験を行った。生後24か月児(2歳)は、鏡に映る自分が「自分」だと認識できる時期であり、本研究結果をより具体的にヒト乳幼児の発達プロセスにおいて考察することを可能とした。 本年度に得られた研究成果は、日本赤ちゃん学会第19回学術集会および日本発達神経科学学会第8回学術集会にて報告した。また、International Congress of Infant Studies(ICIS)2020において発表申し込みが受理され、ポスター発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度より、リズムを合わせる能力の発達と「自己の身体運動に随伴して生じる知覚への敏感性」の関連を検討する新たな研究課題に着手する。この研究課題の遂行には、乳幼児の身体運動に随伴して視覚や聴覚刺激が提示される新たな実験装置の開発が必要である。これまでの技術(Visual Basic)や電子工学技術による回路設計(Arduino)を用いて、実験装置開発を予定している。以上から、当初の予定通り研究遂行に問題はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究課題遂行に用いた実験装置は、前年度にすでに開発したものであった。そのため本年度は、実験装置開発における物品費の支出は特になかった。また、実験参加児における謝礼は、国内共同研究者である京都大学大学院教育学研究科・明和政子教授の科研費により支出した。以上の理由から、当初予定よりも少ない支出で次年度使用が生じた。次年度においては、新たな実験装置の開発が必要であり、主に物品費での支出が予想される。
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